革命のライオン 佐藤賢一著
主人公が相変わらず魅力的だ。体格、人相、音声(おんじょう)、行動、思考、みな型破りで、伯爵なのに平民議員のミラボーが獅子奮迅の活躍を見せる本編「小説フランス革命�」は、身分制議会である三部会で平民議員が貴族や僧侶たちを相手に主導権を争い、翻弄(ほんろう)され苦闘する革命前夜劇である。そして畏怖しつつもミラボーに傾倒するのがひよっこ平民議員のロベスピエール。2人の絡み合いが主旋律となって話は展開する。
18世紀末の新聞や文書を渉猟(しょうりょう)することで人物像のひだ、演説のあやに迫ろうとした労作でもある。著者一流の歯切れの良い文章によってルイ王朝末期の時代のうねりが読み手を襲い、弾ける小波さながらの心理描写は微細を極める。
会話も含め細部における瑕疵が少ないことも安心して佐藤ワールドに浸れる一因だろう。革命の火が燃え盛る続編『バスティーユの陥落』ではダントン、マラも加わり、歴史小説の醍醐味が味わえる。(純)
集英社 1575円
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