がん難民コーディネーター かくして患者たちは生還した 藤野邦夫著 ~「分進秒歩」のがん治療にオーダーメードを勧める
自ら望む治療を受けられない「がん難民」は75万人に上るという。
著者はそうした人たちの相談を受ける、いわば「がん難民コーディネーター」だ。著者自身2度のがん体験をし、母親、妹、弟をがんで失っている。これまで相談を受けた人数が200人を超す、という。
がん難民を生み出す背景として手術偏重、放射線治療医の少なさを挙げる。加えて、標準治療で治る見込みのない患者を追い出すケースもあるという。医師の多忙さ、医療裁判などもがん難民を生み出す。
がんになった瞬間から情報を集めるべき、と著者は強調する。いわゆる情報戦だ。
がん治療は日進月歩というより、「分進秒歩」が適切と著者は表現する。
進歩を象徴するものは「分子標的薬」を使う治療だ。正常細胞を攻撃することなくがん細胞のみ標的にする。
放射線治療も進んでいる。放射線同位元素を永久に挿入するブルキセラピーがその一例。巻末にブルキセラピーを実施する90病院を掲載してあるのも役に立つだろう。
がんを宣告されたら、できれば幅広い判断ができる放射線科医に相談する。セカンドオピニオンを求めるのは当然だ。
がんには200もの種類がある。オーダーメードの治療を模索すべきという意見は傾聴に値する。
がんに打ち勝つための免疫力をつける10か条も参考になるだろう。
朝起き抜けを手始めに1日コップ8杯(2リットル)の水を飲む、玄米を食べるか、玄米の粉を食後にとる、1日に何度かヘソの辺りを温める、がん細胞を打ち砕くイメージを持つ、医師の発言や検査結果に一喜一憂しないというのもある。
ふじの・くにお
1935年石川県生まれ。早稲田大学文学部卒、同大学院中退。出版社勤務後、東京大学等の講師。現在は翻訳家、「がん難民コーディネーター」として活動。
小学館101新書 735円 187ページ
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