『攻殻機動隊』が子供番組に進出、版権ビジネスを狙う

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『攻殻機動隊』が子供番組に進出、版権ビジネスを狙う

携帯電話に手足が生えた「ケータイロボット」が4体並んだ上の写真。中央の2体はバンダイ製の玩具で、右から2番目のロボットは、変形したパソコンのキーボードとの合体という設定だ。一方、両端の2体は外観こそ変わらないが、ソフトバンク製のれっきとした携帯電話。もちろん通話も可能である。(写真:(c)WiZ・Production I.G・バディ携帯プロジェクトLLP/テレビ東京)

これらのケータイロボットが活躍するのが、現在テレビ東京系列で放映中の特撮番組『ケータイ捜査官7』(以下、『ケータイ』)である。だがここで注目したいのは、番組そのものではない。番組の原作・制作にアニメ制作会社のプロダクション・アイジー(ジャスダック上場のIGポートの主力子会社。以下、IG)が参加していることだ。

版権を持たないかぎりうまみは少ない

IGといえば、ハリウッドのクリエーターがこぞって絶賛する『攻殻機動隊』を生み出した実力派アニメーター集団。なにしろ、「クエンティン・タランティーノ監督から『キル・ビル』のアニメ部分の制作を打診されたが、他の仕事で手一杯だったので断ったら、アポなしで東京・国分寺の本社まで直談判しに来た」(石川光久社長)という会社だ。

そのIGにとって、『ケータイ』は勝手が違う。通常のアニメのビジネスモデルでは、放映開始後にキャラクター商品の開発がスタートする(下図)。が、子供向け番組では、企画の初期段階で玩具などの商品化を念頭に置いてデザインを練る場合もあり、『ケータイ』も後者に属する。玩具化と無縁な、「エッジの効いたアニメ」(石川社長)を旗頭にしてきたIGのイメージとはまったく異なるのだ。

しかしその違和感は、業界最大手の東映アニメーション(以下、東アニ)と比較することで解消される。両者の売り上げ構成を見ると、東アニは映像制作・販売事業が53%、版権事業が31%なのに対し、IGは映像制作72%、版権事業11%。両者の決定的な差は版権事業の差にある。金額で見るとその差はさらに広がり、東アニの64億円に対し、IGは10分の1程度の7億円にすぎない。つまり、IGがキャラクター商売を念頭に置いた作品にかかわり出した背景には、版権ビジネスの拡大という大きな戦略がある。

映画やテレビ番組の製作に伴う収入が映像制作収入だとすれば、キャラクター商品化や海外放映などに伴う二次利用的な収入が版権収入だ。人気作品の版権を持っていれば、テレビ放映終了後も継続的に版権収入がもたらされる。1956年創設の東アニでは、版権事業のスタートは『ひみつのアッコちゃん』『マジンガーZ』など、30~40年前までさかのぼる。「その積み重ねで今日がある」と大山秀徳常務は話す。

国内放映終了から10年以上経った今も世界中で放映されている『ドラゴンボール』を筆頭に、『デジモン』『ゲゲゲの鬼太郎』といった強力なコンテンツは8000本以上。これらが生み出す巨額の版権収入が、同社の業績を安定させていると言っても過言ではない。

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