ウーバーが単なる「タクシー代わり」でない理由 遠くからアイデアを借りる「アナロジー思考」

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デジタル化が進んだ世界では、これまで以上にそのような業界や商品・サービスを超えたアナロジーの応用が進みます。それは、デジタルの世界はリアルの世界に比べて抽象度の高いビジネスのモデル化が簡単にできるからです。

例えばウーバーを表面上の配車サービスと捉えるのではなく、「個人と個人が必要に応じてマッチングされる」という「オンデマンドマッチング」というモデルで考えたり、エアビーアンドビー(Airbnb)を「民泊」と捉えたりするのではなく、「稼働率の低い資産をシェアする」というモデルで考えることで、そこから無数の応用が考えられます。

ウーバーを「単なるタクシーの代替手段」と考えるのは、20年前のアマゾンを「単なるオンライン書店」と考えるのと一緒だということです(ウーバー自身もウーバーイーツのほか、ジャンプ[JUMP][電動自転車シェア]、ウーバーボート[水上タクシー], ウーバーMoto[二輪タクシー]、ウーバーエレベート[空のライドシェア「構想」]、ウーバーフレイト[トラック配送]といった乗り物に限らず、過去にはウーバーパピーズ[子犬と短時間遊べるサービス]といったものまでマッチングを試みています)。

近年ではビットコインを「単なる暗号資産の1つである」とだけ考えるのは、その上位概念である「ブロックチェーン」の「分散型台帳」としての限りない可能性にふたをしてしまうことを意味しています。このように、1つの事例を見てそれを抽象化してアナロジーでほかの応用を考えられるかどうかはビジネスにおける機会発見の重要な分かれ目になるのです。

【HOW】ロジカルシンキングとアナロジーの異なる視点

思考にも大きく「守り」と「攻め」があります。

守りの代表がデータやファクトをベースに論理的に考えること、つまりロジカルシンキングだとすれば、攻めの代表がこのアナロジー思考です。

アナロジー思考は創造的に斬新なアイデアを考えるのに有効な手法です。

同じ思考でもロジカルシンキングとはまったく異なる視点も重要になってきます。

守りのロジカルシンキングでは「合理的な結論を導く」のが目的であり、連続的に(飛躍なしに)考え、ひらめきの要素はありません。

一方、攻めのアナロジー思考では「大胆な仮説を導く」のが目的であり、不連続的に(飛躍ありで)考え、ひらめきの要素が大切になります。

いわば、ロジカルシンキングを「物的証拠」(これが出てきたら犯人確定)とすれば、アナロジー思考は「状況証拠」(怪しい容疑者をリストアップする)という違いといえるでしょう。

守りとは「当たり前のことを当たり前にやる」(その代わりによくも悪くも個性は出ない)ことであるのに対して、攻めのアナロジー思考は大胆な仮説を創造的に導くためのものなのです。

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