メガバンクが個人向けに預金ならぬ「資本」集め
メガバンクが相次ぎ「個人向け劣後社債」発行を発表している。三井住友銀行とみずほコーポレート銀行は1000億円、三菱東京UFJ銀行は4500億円を3月末までに調達する計画だ。
銀行には自己資本比率規制があり、国際統一基準で8%以上が必要。3メガバンクグループは米国で証券も含めた包括的業務を行うために、自己資本比率10%、Tier1(中核的)自己資本比率6%以上の維持を必達としている。2008年度は外国債や株式の巨額減損を強いられ、不良債権処理費用も拡大。放っておくと自己資本比率が低下するため、昨年から各メガバンクの持ち株会社は、高い調達コストでTier1に算入される普通株や優先株、優先出資証券の発行を余儀なくされてきた。
一連のTier1増強によってTier2(補完的)自己資本に算入できる劣後債の枠も拡大。劣後債は投資家にとって普通株や優先出資証券よりもリスクが低く、発行側(銀行)からすれば利払いが低くて済む。特に今回の仮条件は、銀行側が当初想定していたよりも低い金利だという。Tier2に算入していた有価証券の含み益減少を補う役割もある。金融危機以後、従来の引受手だった機関投資家は投資余力が低下しており、個人が資本調達先の“ターゲット”になっているわけだ。
大規模な個人向け劣後債発行は、昨年8月の三菱東京UFJ銀行による1700億円が最初。みずほ銀行も昨年12月に調達を実施し、当初予定の500億円を大幅に上回る770億円を集めた。人気の背景には、昨今の世界的な金融機関の国有化を受け、日本も政府が銀行を潰さないとの思惑が個人に働いているのだろうか。また、預金金利がほとんどつかない中、年間2・3~3・3%台(今回の劣後債の仮条件)の金利がつく商品がほかに見当たらないため、魅力を感じているのかもしれない。
景気急減速に伴う企業業績悪化は続き、09年度は不良債権の急増が予想される。株式市場が一段と底割れするリスクもあり、自己資本比率低下の懸念は依然として付きまとう。劣後債には算入限度額があり、発行が一巡すればまたTier1増強に動かなくてはならない。余裕資金の在りかを求め、銀行の資本調達競争が続く。
(大崎明子 =週刊東洋経済)
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