かんぽ生命が「不適切な保険販売」に走ったわけ 保障性商品への急シフトに現場が追いつかず
中でも2017年10月に新発売した医療特約の「その日からプラス」(無配当総合医療特約)の発売以降は、終身保険・養老保険に医療特約を付加して販売するスタイルが主流になり、「契約乗り換え件数が倍増した」(かんぽ生命募集管理統括部の平井康幸部長)。長寿化の流れの中で医療保障は顧客ニーズも高く、収益性の高い第三分野商品の販売は、貯蓄性商品の落ち込みをカバーするためにも必要不可欠だった。
ただ、保障性商品への乗り換えを積極的に進めたことで、数々の問題を引き起こした。例えば、既存の契約を解約後に新しい保険に加入しようとしたが、病気など健康状態を理由に引き受け謝絶となった例があった(2014年4月〜2019年3月の申し込み分で約1万5800件)。
さらに、既存契約の解約後に新たな保険に加入したが、病歴を正確に告知しないなどの告知義務違反を問われて保険金が支払われないうえ、契約解除となったケースもあった(同じ期間で約3100件)。
つまり、契約乗り換えを勧められた結果、事実上の「無保険状態」に陥ってしまった顧客が数多く存在するということだ。
無保険や二重契約を意図的に作り出す郵便局員
これらとは別に、同一商品間で乗り換えをした契約の中には、解約して新契約を結ばなくても、「特約切り替え」などの簡易な手続きで、新しい医療保障特約などを付加できたケース(2017年10月以降で約5000件)もあった。
具体的には、かんぽが株式上場した後の2015年10月から2017年9月までの間にかんぽ生命の保険に加入した顧客は、旧入院特約(「その日から」)から新医療特約(「その日からプラス」)への切り替えが可能で、契約乗り換えの必要はなかった可能性があるという。
無保険状態や二重契約を意図的に作り出した郵便局員の存在も取りざたされており、現在両社で詳細を調査中だ。この問題の背景には、乗り換え契約時に関わる営業評価制度があると見られている。
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