「東大中退」「余命5年」42歳ラッパーの壮絶人生 ダースレイダーを支えたヒップホップの精神
字面だけ見ると、生を諦めているように見えるかもしれない。しかし、この男の口ぶりにネガティブさはないし、かと言って達観しているふうでもない。
「もちろん、僕だって暗い気持ちにもなるし、落ち込むときもあります(笑)。しんどくてくよくよしたり、悩んだりする状況を僕はダメだとも思わない。その状況を愛してあげるのもいいと思う。ただ、ずっとくよくよしてたらもったいないなって。だったら、状況がよくなるほうを僕は選びたい。死ぬまでは、いくらでも生き方を選ぶことができますから」
アウトサイダーの役割
ダースレイダーは小学生と保育園児の女の子をもつ2児の父親でもある。親として、娘たちにどう接しているのだろうか。
「世の中にはいろんな人がいて、いろんなことが起きている。それを理解する感受性をどれだけ育てられるか、豊かな世界にどれだけ触れさせてあげられるかが、僕の、親としての責任だと思っています。意識的にたくさん会話をして、一緒にいる時間を増やすようにしていますね。上の子にはもう教わることも出てきて、『あれ? 俺もう抜かれてる?』って感じる瞬間もありますが(笑)」
“世の中にはいろんな人がいる”。ダースレイダーが闘病生活で学んだことでもある。
「病人って、会社も学校も休んで、社会からいないことにされるじゃないですか。病気になったことで、そういう場所から社会を見る視点を僕は授かりました。世の中はいろんな人が生きているから楽しいわけで、病人だってそこの一員のはずなんです。もっとハッキリとそういう社会を実現するためにも、意図的に『アウトサイダー』でいることを心がけてるんです。
例えば、ラップでオーケストラと共演したこともありますし、叔母が亡くなったときの斎場でも歌いました(笑)。子どもの保育園の行事や小学校のPTAイベントにもラップで参加したことがあります。普段、自分が属さない場所へ積極的に出かけていく。これはモットーみたいなものです。
僕がそこにいることで『この人、なに? 誰?』っていう違和感が生まれる。派手な髪型、派手な眼帯、派手な服ですから当然ですよね(笑)。でも、僕みたいなアウトサイダーが普通にそこにいることで、『あぁ、ここはいろんな人がいていい場所なんだな。自分もいていいんだな』って感じてもらえる。
おれがヒップホップをやっているのもそう。売れる、売れないよりまず、『こんなヤツが歌ってるぞ』と知らしめたい。こんなヤツがやってる音楽ってどんなんだろうって興味を持ってもらいたい。そして多様性がもっと認められればそれが最高ですよ」