「東大中退」「余命5年」42歳ラッパーの壮絶人生

ダースレイダーを支えたヒップホップの精神

多様性と言っても、それを実行するのは簡単ではない。現在42歳のダースレイダーも、いわゆるオーシャンズ世代。一般的には、仕事もプライベートも安定し、趣味を楽しむ余裕ができ始める世代である。

一方で、ルーティンをこなす日常にジレンマを感じる男たちも少なくない。例えば「やっぱり自分のやりたいことをやりたい」と転職を考える人もいるだろう。何度倒れても「ダースレイダー」というオリジナルの生き方を貫くこの男の右目には、こうして自由と責任の間で揺れ動く同世代たちがどう映っているのか。

ダースレイダーの「怯まない生き方」

「そのルーティンの日々が楽しいなら全然そのままでいいと思いますよ。でも、もし楽しいと感じていないなら、楽しくなる方法を探せばいいんじゃないかな。仕事もそうですよね。新しいことにチャレンジしたくて転職したいと思うなら『やってみればいいんじゃないの?』って思うし」

しかしダースレイダーはこうも続ける。

「まぁ『自分の好きなことして生きろ!』って言えば簡単だけど、僕は転職や新たな挑戦を躊躇してしまう気持ちもわかります。日本の場合、“変わらないこと”がよきことで、忠誠心が高いヤツがいいヤツ、辞めるヤツは裏切り者だっていう風潮がありますよね。

『あいつは仕事ができないから辞めた』とか、『人間関係がダメだったんじゃないか』とか後ろ指を指されたり。転職したら負け、みたいな古い考えが根強く残っていて、とてもじゃないけど自由に新たな道へ踏み出せるような空気じゃない。だから、変えないといけないのはみんなの生き方っていうより、むしろそういう社会の空気のような気がします。

僕もこんな見た目だけど、たまに犬や猫とか烏を眺めてると『こいつらは人間社会と関係ないところで生きてて羨ましいなぁ』って思います(笑)。ルーティンって楽かもしれないけどやっぱり息苦しかったりもするから、たまにはそっから外れたい衝動に駆られる人も多いんじゃないかな。それが許される社会だといいですよね」

ダースレイダーのように強く生きることは簡単ではない。同じ立場に置かれたときに、こうも前向きでいられる人は決して多くないはずだ。しかし、マイナスをプラスに変える発想の転換や、多様性を認め、自由に生きようとするその姿勢は、自らの人生にも必ずや活かせるはずだ。

ダースレイダーというラッパーの怯まないその生き方は、今日も誰かを確実に勇気づけている。10年後、20年後も変わらずにリスナーを照らし続けるだろう。

(ジョー横溝/取材・ぎぎまき/文)

ダースレイダー/1977年フランス・パリ生まれ、イギリス・ロンドン育ち。吉田正樹事務所所属。大学在学中にラッパーデビュー。現在は自らのバンド「ザ ベーソンズ」で活動するほか、司会業や執筆業など、さまざまな分野で活躍を続ける。自身の闘病体験を赤裸々につづった自伝『ダースレイダー自伝 NO拘束』(ライスプレス)も絶賛発売中。
 
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