九州初リッツ・カールトン福岡が大注目の理由

ホテル・オフィスが慢性的に不足する福岡市

要は、世界のリーダーたちを受け入れるに足る格式と規模を兼ね備えるホテルが福岡市に少なかったことが、G20本会合という世界的イベントを開催し、市や県、ひいては九州の知名度を海外にも高める機会を失ったというわけだ。

そもそも、福岡市は宿泊のキャパシティーが乏しい街である。例えば、国公立大学の試験の時期に大きなイベントが重なると、宿泊施設を取れない受験生が数多く発生してしまうくらいだ。『「福岡市の観光・MICE」2019年版(福岡市観光統計)』によると、客室稼働率は直近5年間は80%を超え、かなり高い水準で推移している。

一方で、福岡空港が2019年春から完全民営化され、インバウンド観光客がさらに急増する傾向にある。高島市長は、「リッツ・カールトンの開業が皮切りとなり(ほかの宿泊施設も充実し)、これまで福岡市を訪れてこなかった新しい層を誘致できる」と期待感を表していた。

リッツ・カールトンを運営するマリオット・インターナショナルのクレイグ・スミス氏(アジア太平洋社長兼マネージングディレクター)は、「福岡市は観光地として今後の成長が見込まれる理想的な進出先だった」と述べていた。

オフィスも脆弱な環境だった

一方、オフィスについても福岡市は東京や大阪などのほかの大都市と比べ規模や量、質の点で脆弱だった。そのため、市長は「世界的企業2社から福岡市への進出の打診があったが、お断りせざるをえなかった」と話していた。

彼らが求めるワンフロアで大人数の社員が働くことができるオフィスビルがなかったためだ。そうした意味で、九州最大のオフィス面積、そして世界水準の高級ホテルを擁する旧大名小学校跡地活用事業は、福岡市にとって今後の都市の成長を考えるうえで欠くべからざるものだったのだ。

冒頭の鴻臚館跡は、旧大名小学校跡地から直線距離でわずか1kmほどしか離れていない場所にある。今回の再開発施設は「日本最大の国際交流の拠点」とはいかないまでも、アジアのゲートシティの足掛かりにはなりそうだと筆者には感じられた。

そして、福岡市がアジア大陸に近い地理的条件と交流の歴史を有することを改めて理解していただきたいということもあり、今回併せて紹介した。

なお、福岡市では「博多コネクティッド」と呼ばれる博多駅周辺の再開発も今年5月に本格始動されている。これは容積率緩和など規制緩和により老朽化した20棟のビルを10年間で建て替えを目指すものだ。

同プロジェクトも天神地区同様に、福岡市のビジネス・観光などの機能を一層強化する目的である。このように、福岡市には今、再開発案件が目白押し。筆者のふるさとであるが、帰省するたびに街の雰囲気の変化が感じられる。

福岡市は「支店経済の街」と称され、どこか田舎くささも残っていたかつての姿から大きく変貌しつつある。街の発展ぶり、そしてそのスピード感を好ましく思う反面、それはそれで筆者には少し寂しく、複雑な気持ちになる部分もある。

例えば、「安くてうまいもん」が有名な街だが、最近は筆者がかつてよく通っていたラーメン店の価格が上昇し、なんと替え玉が200円(従来は100円)になった。これは原材料費の高騰や家賃、人件費の上昇なども影響しているとのことだが、町の発展が福岡市の魅力の一部を損なっている感覚になり、それが寂しさと複雑さを感じる要因の1つになっている。

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