――「パートナーゾーン」は車いすやベビーカーで利用しやすいように工夫された空間ですね。真ん中に立ったままで軽く腰掛けられるいすもあって、思い切ったデザインですね。
若尾:西武線は生活路線と言われているのですが、その沿線で生活している方々に対してバリアをどうやってなくしていくか。
例えば1駅だけ乗る高齢の方は、1駅座ってまた立ち上がるほうが実は立っているよりつらい。それで、パートナーゾーンには立って軽く腰掛けられるシート(中腰いす)があります。
そのシートの前は下端の低い窓ガラスですが、子どもが持てるような低い位置にバーがあります。そこで子どもが外を見ていると、後ろからおばあちゃんが軽く話しかけられる、とか、そういう新しいコミュニケーションが生まれるといいなと。
――そういう意図があったのですね!
山田:僕は、電車は公共交通機関ですが、公共教育機関であってもいいのかなと思っています。要するに子どもたちも含めて、みんなのマナーがよくなっていく場所であってほしいと。「こんな電車が自分たちの街にあるんだよ」って思うことで人にやさしくなれるというか。そういうのをつくっていきたいですよね。
"鉄「道」"を輸出したい
――みなさんが思う、これから目指すGKデザイングループの未来はどのようなものでしょうか? 交通を中心に社会全体について、デザインで今後こういうところを変えていきたいという点がありましたらお願いします!
山田:日本の鉄道は、ヨーロッパからノウハウを持ってきてできたわけで、オリジナルではないのです。だけど世界とは違う何かがあるわけです。今度はそれを世界にお返ししなきゃいけないところに来ているのかなって思います。
GKは「道具」という言葉を大事にします。英語にはしないで"DOUGU"。道具は「道の具え」って書きますよね。人が人として生きていくために必要な道の具えとして道具がある。すべての人工物です。日本には独特の道具観があって、それは物を通して他人を大事にする、武士道みたいな世界です。みっともないことをしてはならないという利他の考え方です。茶道、華道とか、弓道とか、柔道とか、そういう「道」の世界は当たり前のように僕らの生活の中に潜んでいる。
こうした考え方が、鉄道をつくる精神の中にたぶん入っているような気がします。それを僕は「鉄道」と言わないで、鉄「道」と言いたいと思う。だから日本の鉄「道」を輸出したいと思うわけです。人が他人を思い合って作法が生まれ、輪となって生きていけるような、そういうものを鉄道を通して世界に出していくべきじゃないかなと考えています。
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