若尾:僕は鉄道や公共交通を使う気持ちがポジティブになってほしいと思っています。しょうがないから電車に乗る、例えば通勤電車はこれがないと目的地に着かないから乗るしかないと、今は残念ながらそういうふうに思われている部分もあると思うのです。それに乗って行きたいなと思っていただけるような、そういう移動の道具がつくれるといいなと考えています。
北嶋:私は鉄道ファンでもあるのですが、やっぱり(鉄道には)ファンだけが感じる魅力ではなく、普通の人も感じられる魅力がたくさんあると思います。交通機関は今、さまざまな意味で転換期だと言えますが、その中で改めて鉄道がどういう魅力を発信するのか。そこを掘り下げていく、または新しくつくっていくのがわれわれの仕事の中で必要になってくるところかなと考えています。
デザインの持つ可能性
――皆さんのお話を聞いていると、デザインの可能性って私たちが認識している以上にありますね!
山田:美しいモノがあると心地よくなるのですよ。心地いい、心安らぐというのは「安心」ということ。安全と安心はかなり違っていて、安全はテクノロジーでなんとかなっても、安心はそうじゃないですね。
安心というのは、母親のお腹の中にいたときの守られていたあの感覚が身体に残っていて、そういう状態に近づいた瞬間に感じるのじゃないか。それは固有の文化かもしれない。そのメカニズムを説明して、本当の安心を提供できるようにしていくっていうのが僕らの仕事じゃないかなと思うのです。
―取材を終えて―
GKデザイングループさんのお話を聞いていて、いつも思うのがビジョンが明確に共有されていること。そして、各々がその持ち場で輝けるのは、その確固たる信頼とチーム力があるからこそということです。鉄道をはじめ、普段何気ないところで目にするデザインに私たちは行動を促されているのかと思うと感慨深いところがあります。かつて、大学で心理学を学びましたが「アフォーダンスの理論」を思い出しました。
皆さんのおっしゃるような、マナー向上、品のよい公共交通の使い方というものが近い将来、当たり前のように根付いていくと沿線の治安もよくなりそう。高級ホテルのラウンジで、必然的に背筋が伸びるのと同じ原理でしょうか。そうしたマインドも含めて鉄道技術を海外へ輸出できると、日本ならではの文化も普及できそうですね。"鉄「道」"、とても奥が深いです。
今後、日々の業務に合わせて、対外的な広報活動にもますます力を入れていかれるとのこと。年に1度の鉄道デザインの祭典「レイルウェイ・デザイナーズ・イブニング」でのお話も楽しみにしています!
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くの ともみ / Tomomi Kuno
フリーアナウンサー、女子鉄。ホリプロ所属。旅行が趣味で、大学時代よりアメリカ・イタリア・インドネシア・コスタリカなどさまざまな国を訪問。国内は「青春18きっぷ」でおトクに巡る派。鉄道関連のTVやラジオ・イベントでMCを多数務め、テレビ朝日「お願い!ランキング」ほかゲスト出演も。
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