ミッキーvsキティ、JR2社「コラボ対決」の裏側 新幹線から在来線まで、西日本と九州の戦略

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問題は、キティ環状線を見る機会が限られることだ。キティ新幹線は1編成しかないが、運行ダイヤが発表されている。キティはるかは本数が多いので運行ダイヤを発表するほどでもない。しかし、キティ環状線は1編成のみにも関わらず運行ダイヤの発表もない。環状線には323系だけでなく、紀州路快速や大和路快速も乗り入れる。その一方でキティ列車は環状線のほか、桜島線を走ることもある。

「ハローキティ環状線トレイン」は1編成だけ。車内にもキティが(記者撮影)

つまり、キティ列車に出会える確率はかなり低い。「環状線を毎日利用するビジネスパーソンが月に1回出会えるかどうか」(JR西日本広報)という難易度だという。

その意味では、インバウンドへのアピールを狙ったキティ新幹線やキティはるかと違い、キティ環状線は通勤・通学で日常的に環状線を使っている利用者へのサプライズ企画といえる。

キャラ列車は日本の「売り」に

JR九州、JR西日本ともに「個別の列車の乗車率は調べていない」として、利用状況は公表しないが、人気キャラクターをデザインした列車が全国各地を走っていることを考えると、一定の効果は得られているはずだ。

博多駅構内に展開される「ハローキティ新幹線カフェ」(記者撮影)

また、JR西日本は博多駅構内に「ハローキティ新幹線カフェ」をオープンするなど、鉄道車両以外にもキティを展開している。JR九州とJR西日本はどちらがキャラクターとのコラボを積極的に行なっているのか。現状では、幅広く展開しているという点でJR西日本が一歩リードしているように見えるが、ミッキーマウスの誕生日が11月18日であり、さらにイベントを仕掛ける時間の余裕があることを考えると、JR九州も8月1日のミッキー新幹線第2弾以降にも、新たな列車を投入してくるかもしれない。

キャラクターを起用した列車としては、キティ、ミッキーのほかにJR東日本が「ポケモン」を活用した「ポケモンウィズユートレイン」を東日本大震災の被災地向けに走らせており、JR四国は予讃線、土讃線などに多数の「アンパンマン列車」を走らせている。

日本の鉄道は時間に正確なことで世界に知られているが、日本を訪れる外国人観光客は、人気キャラクターのラッピング列車が全国各地を走っていることにも驚かされるに違いない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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