レクサスのデザインはここまで徹底している 部外者立ち入り禁止の「聖域」で神髄を見た
レクサスに限らずだが、通常、量産車は、デザインがほぼ確定した時点で、量産できるかを生産技術の担当者が検討し始める。既存の技術でできれば簡単だけれど、複雑なカーブなどは新しい手法を生み出さないとできないことも少なくない。
いま生産技術で注目されているのは、アルミニウム板の取り扱いだ。レクサスでは、今後、軽量化(軽い=省燃費化)に貢献するという理由でアルミニウムをボディーパネルにも積極的に使っていく方針だ。しかしアルミニウムは曲げに強くなく、小さく曲げると割れてしまうという性質を持つ。
「とはいえ、すぐにデザイナーに“できません”なんて言いたくないじゃないですか。“アルミをこんなに曲げられるのか?”と最初は疑問に思っても、なんとか工夫して、量産ラインに載せられるような作りかたを工夫したいんです」
デザインセンターで出会ったレクサスの生産技術の担当者はそう語った。精度と面品質(歪みや凹凸のない面)と生産性を、生産技術はつねに考えながら、デザイナー案を現実のものにするべく粉骨砕身の努力をしているのだ。
レクサス車でとりわけ苦労したのは、アルミニウム板の使用を拡大した大型高級クーペ「LC」(2017年)でした、と生産技術の担当者は明かす。ドアのパネルに(実は)複雑なカーブを入れて、実際の厚み以上に、張り出し感と奥行き感を出したい、というのがデザイナーの望みだった。金型まで見直して、それを実現したそうだ。
徹底した作り込みに込めた思い
素人目には、確かに美しいカーブだな、ぐらいにしか見えないが、プロには“すごいな”と思える仕上がりなのである。見た目のいいものは、実は、生産者が半端ない努力をした結果だということだ。
扱いにくい素材で複雑な形状のボディーを作るのは、いまのレクサスの挑戦(の1つ)という。「挑戦がないと進歩がないですから」という生産技術の担当者の言葉が印象的だった。
レクサスでは「クラフテッド(crafted)」という言葉をよく使う。レクサスでデザインを担当する須賀厚一部長によると、最後まで徹底的に作り込むこと、を意味するそうだ。