解体されるシティ、国有化の次を襲う米銀行危機“第2章”

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 一方、戦線は広大だから、世界中でトラブルを抱え込むことになる。エンロンの“循環取引”や、英国債の“時間差”ディーリングで違法利益を稼ぎ、日本ではマネーロンダリングの嫌疑をかけられた。とどめが、激しくのめり込んだサブプライムの証券化商品である。

10年前、合併で1550億ドルに膨らんだ時価総額は190億ドルに縮んでいる。シティには450億ドルの公的資金がつぎ込まれている。政府支援がなければすでに実質債務超過、というのが市場の判定である。

シティ解体の今、金融界の新しいキーワードは、「国有化」だ。

ABNアムロの買収が裏目に出、英国史上最大の280億ポンド(3・7兆円)の赤字を公表したロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)。英国政府はそれまでの優先株を普通株に切り替え、政府の出資比率は58%から70%に上昇した。

地価はまだ4割下がる 衰退期は10年続く

シティも“危ない”。

ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、シティの普通株エクイティに対する資産の倍率は47倍。これをJPモルガン並みの26倍にまで引き下げるには、350億ドルの増資が必要になる。シティの時価総額は190億ドルだから、政府が増資に応じれば、自動的に国有化される。

米国政府は、できれば国有化は回避したい。財務省とFRB(連邦準備制度理事会)は「バッドバンク」を設立し、銀行の不良債権を買い取る方策を探っている。だが、第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストが言う。「オフバランス化は難しい。よほど悪くならないと踏み切れない。悪くなったら損失が大きくなりすぎて、二の足を踏む」。

米国の債券運用会社の最大手、ピムコは米国金融機関の潜在損失を250兆円と算定している。が、そこで打ち止めではない。「地価は悲観シナリオでさらに30~40%下がる。不況が深化し、全産業で新たな不良債権が発生する。危機の第2波がやって来る」(小関広洋同社エグゼクティブ・バイスプレジデント)。

しかし、追い詰められ、国有化されても金融界はなお救われない。80年代の米国S&L(貯蓄貸付組合)危機のときは、金融機関に国債を買わせ、その後、金利を下げて利ザヤを稼がせた。が、米FFレートがゼロ近辺の今、その手は使えない。逆に、政府が“政策融資”を強要する(すでにシティは住宅ローンの既契約の条件変更を了承する方向だ)こと、必定だ。収益は容易に復元しない。

「米国金融界の衰退期は10年続く」(熊野氏)。米国の「失われた10年」がこれから始まる。


(週刊東洋経済)
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