解体されるシティ、国有化の次を襲う米銀行危機“第2章”
昨秋、米国政府が金融機関への資本注入に踏み切ったとき、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)のCEO、ケネス・ルイス氏は大見得を切った。「そんなカネは必要ない。欲しいと言ったこともない」。
業界のために不承不承受け入れてやる、と言わんばかり。シティグループに対する“当てこすり”でもある。シティは資本注入に加え、3060億ドル(28兆円)の資産について将来、損失が発生したら政府が補填するという支援を取り付けていた。
対照的に、バンカメは(そのときは)政府資金に頼ることなく、住宅ローン最大の貸し手・カントリーワイド、続いてメリルリンチを救済買収することを決断、「金融界の救世主」として拍手喝采を浴びていた。
そのルイス氏が豹変した。「カネを出さなければ、メリルの買収を白紙に戻す」と財務省を“恫喝”したのである。破談になれば、立ちどころに国際金融市場が大迷走する。
財務省は200億ドルの再度の資本注入に加え、シティ同様、1180億ドルの債権に対して将来損失を補填することをバンカメに約束した。
もう恥も外聞もない。バンカメは2008年の第4四半期、引当金・償却が1年前の3倍、140億ドルに拡大し、1991年以来の赤字に転落したのだ。主因はメリルの証券化商品や金融派生商品。「第4四半期までわからなかった」と弁明に相つとめるバンカメも大甘だが、資産劣化のスピードは想像を超えている。
「一つになったことはない」すでに実質債務超過?
シティのCEO、パンディット氏も前言を翻した。昨年11月まで「ワンストップショッピングは守り抜く」と繰り返していた。「傘」のマークの下、あらゆる金融商品をカバーする金融コングロマリットの旗印は、絶対に下ろさない……。
ところが、その舌の根も乾かない1月13日、傘下の証券子会社スミス・バーニーをモルガン・スタンレーに売却。それでも、株価急落に歯止めがかからず、16日、グループの2分割を発表した。コア事業は企業向け融資や富裕層向け銀行業務、カード事業など。非コア事業には個人向け証券業務、消費者金融、自己勘定の資産運用などが分類された。観測どおり、早晩、非コア業務が売却されれば、シティは一気に資産の3分の1をそぎ落とすことになる。コングロマリットの解体である。
10年前、トラベラーズのワイル氏、シティコープのリード氏の両CEOが固い握手を交わしたとき、世界は壮大な構想に圧倒された。「われわれは1億人の銀行から10億人のための銀行になる」。コングロマリット化は、「規模の経済」「範囲の経済」を満喫するはずだった。
が、幻想がさめるのは早かった。パンディット氏自身が認めている。「トラベラーズとシティが本当の意味で一つになったことはない」。そもそも、金融商品は“買い回り”品であり、肝心の顧客がワンストップショップを望んでいない。しかも、M&Aに次ぐM&Aで異なる企業文化が衝突し、社内では権力闘争が渦巻いた。高度に専門化した多種多様な金融商品を統一的に管理・監督できる人間など育ちようがない。