「動物虐待を楽しんでいた」52歳男に見る心の闇 虐待者は「人間にも」危害加える可能性がある

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2014年1月6日、兵庫県警は動物虐待に関する相談や通報を受け付ける専用電話「アニマルポリス・ホットライン」を開設した。

設立の理由は前述したように「動物虐待と対人暴力の連動性」で、兵庫県警のホームページでは「重要凶悪事件の前兆事案である動物虐待事案への的確な対応を図る」としている。可能な限り凶悪犯罪を未然に察知し、予防するという取り組みである。

通報を受けた場合は、その事案により関係する署や動物愛護相談センターなどに連絡し、情報の共有と適切な対策を行っている。大阪市においても「動物虐待ホットライン(動物虐待相談電話)」の8月1日開設を予定している。

このように相談窓口を一本化することは、情報の共有とともに、適所においての素早い対応が可能となる。また、通報先が明確になることで、何か不審に思うことがあれば一般市民が通報しやすくなる。大阪市ではこの取り組みの広報活動を通じて「動物虐待が犯罪であることを周知し、未然防止を図る」としてその効果を期待している。

日本の課題

すでに英国においては、約200年前に英国動物虐待防止協会(RSPCA)が、アメリカにおいては約150年前にアメリカ動物虐待防止協会(ASPCA→現在はニューヨーク市警察が業務を受け継ぐ)が設立されている。動物虐待などの通報を受けて捜査を行い、動物虐待犯を逮捕する権限を持つ。このほか、飼育環境の改善や飼育放棄防止、里親探し、しつけ、カウンセリングなど幅広い活動を行っている。

しかしながら、日本における動物虐待ホットラインは、都道府県あるいは市区町村が自主的に設置しているものであり、その事案の取り扱いも県下、市下に限定されている。残虐性が年々エスカレートしている動物虐待を減らすためには、すべての都道府県にホットラインを開設し、監視の目を光らせ、素早い対応をする必要があるのではないだろうか。

開設の理由にあるように、動物虐待を「動物がかわいそう」という視点だけでなく、「動物虐待の矛先が人間に向く可能性がある」と捉えることで、監視の目は上がることだろう。それとともに、動物虐待を「楽しんどった」と語るような人間の怖い闇を、専門家とともに解明していくことが望まれる。

阪根 美果 ペットジャーナリスト

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さかね みか / Mika Sakane

世界最大の猫種である「メインクーン」のトップブリーダーでもあり、犬・猫などに関する幅広い知識を持つ。家庭動物管理士・ペット災害危機管理士・動物介護士・動物介護ホーム施設責任者・Pet Saver(ペットの救急隊員)。ペットシッターや保護活動にも長く携わっている。ペット専門サイト「ペトハピ」でペットの「終活」をいち早く紹介。豪華客船「飛鳥」や「ぱしふぃっくびいなす」の乗組員を務めた経験を生かし、大型客船の魅力を紹介する「クルーズライター」としての顔も持つ。

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