「動物虐待を楽しんでいた」52歳男に見る心の闇 虐待者は「人間にも」危害加える可能性がある

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「連続殺人犯が事件前に動物を虐待していた」「動物虐待は凶悪な犯罪の予兆である」という言葉を耳にしたことがある人もいるのではないか。すべての凶悪犯罪者が動物を虐待しているわけではないが、欧米における研究では、「動物虐待と対人暴力の連動性」が指摘されている。

実際、日本においてもその連動性が見られる事件が起こっている。1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件では、加害者である少年が事件前に猫を殺害して、首を切り落としていた。2014年に起きた長崎県佐世保市の高1女子生徒殺害事件では、加害者である少女が事件前に動物の解剖に熱中し、「猫を解剖したりしているうちに、人間で試したいと思うようになった」と供述している。

欧米においては顕著であるが、日本においては動物虐待犯の研究はほとんど行われていない。そのため、加害者の犯罪心理もつかめていない。年々増加する動物虐待の現状から、その行為に及ぶ根っこにある原因がどこにあるのかを見つけて、対策を練る必要があるのではないだろうか。

動物愛護法改正だけでは足りない

偶然にも、この52歳の男が逮捕される前日(6月12日)に動物愛護法が改正された。動物虐待への罰則も、「人が被害者になる重大事件の芽を事前に摘む」ことを目的に「動物を大切にする」という意味合いも強化された形となる。

しかしながら、前述の環境省の報告書による判例数は驚くほどに少ない。これは、多くの動物虐待事件で犯人が見つかってないことを示す。

動物は人間と違い言葉を発することができない。そのため、交友関係などからの目撃情報などは見込めず、捜査が難航しやすい。ネット上に投稿された動物虐待も、投稿者は匿名のため特定は極めて困難だ。

今回の法改正での罰則の強化が動物虐待の抑止力になればよいが、それだけでは隠れてその行為に及ぶ人が増えるだけと法律に違和感を示す意見も多い。動物虐待の動画や文章などを取り締まるための新たな法律も望まれている。罰則の強化だけでなく、52歳の男も利用したという「動物虐待専門の掲示板」にもメスを入れる必要があるだろう。

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