外国人を不当にこき使う繊維・衣服産業の疲弊 技能実習生を劣悪な環境に追い込む構造要因

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この小規模化の中で、過酷な市場環境への対応のためにコストを極限にまで削りたい事業所側の思惑と実習制度の構造が組み合わさり、技能実習生を劣悪な労働環境に追い込み、人権侵害が横行しやすい環境が生まれてしまっている。

声を上げても解決するとは限らない

小規模企業がゆえ、実習生を巡る問題が表面化した企業は、正規の給料を払う能力がなく、倒産に至るケースが少なくない。その場合、未払いの賃金などは未解決になってしまうのだが、中には国の「未払賃金立替払制度」をアテに恣意的に倒産する、いわゆる「計画倒産」によって責任逃れをするケースもあるという。この制度では半年分、8割の賃金しか補償されない。

ジャパンイマジネーションの商品を生産していた岐阜の工場は、破産を口実に未払い賃金の支払いを拒否した。6月19日現在、働いていた実習生たちに対する未払い賃金計約5400万円(実習3年目の6人に対し約600万円ずつ、2年目の6人に対し約300万円ずつ)が未払いのまま、実習生たちは帰国してしまったという。これについて外国人労働者救済支援センター所長の甄凱(けんかい)氏によると、同社社長がその後、同じような業務内容の会社を設立していることを登記簿で確認しているという。

【2019年7月4日12時30分追記】初出時、ジャパンイマジネーションの生産工場にかかわる表現に一部誤りがありましたので、修正しました。

このことは、実習生自身による相談が必ずしも解決には向かわないという救われない現状を示している。外国人労働者問題に詳しい指宿昭一弁護士は、サプライヤーが破産を口実に賃金を支払わない場合に備え、「業界全体で未払い賃金を補填する基金を早急に設立すべきだ」と話す。

過剰供給と単価の下落が進む繊維・衣服産業の中で、しわ寄せがきているのは生産工場で働く労働者たち。その中で日本の繊維・衣服工場は、できる限り短期間で、できる限り安く、高品質な製品を作ることが求められている。この構造が実習生に対する不当、不法な労使関係を生んでおり、解決の糸口は見えてこない。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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