外国人を不当にこき使う繊維・衣服産業の疲弊 技能実習生を劣悪な環境に追い込む構造要因
ジャパンイマジネーションはその後ほどなく、直接の取引先であるアパレルメーカーに向け、法令遵守を呼びかけた。同時に実態調査を行い、9社15工場で少なくとも外国人技能実習生90人を雇っていることを把握した。それらの工場へジャパンイマジネーション社員の直接訪問を依頼。はじめは拒む取引先も多かったというが交渉を重ね、2019年6月26日時点までに11工場を訪問。残る4工場への訪問に向け、現在も交渉を続けている。
「工場と直接の取引はないとはいえ、商品を販売する立場としても、まったく責任がないわけではないと思うようになった」。東洋経済の取材に対し、ジャパンイマジネーションの木村達央社長はこう説明した。同社は今回の件を受け初めて、生産工場の実態を把握したのだという。
しかし、悩ましいのはジャパンイマジネーションが工場で働いている実習生について直接、働きかけられる立場にはないことだ。それに加えて、ジャパンイマジネーション1社がどんなに努力しても、それは業界におけるごく一部でしかない。
繊維産業で最も事態が深刻な理由
実は技能実習制度における不正行為は、繊維や衣服関連の産業に目立つ傾向がある。経産省が昨年設置した繊維産業技能実習事業協議会によると、2017年に実習生に対し長時間労働や賃金不払いなどの不正行為のあった183機関のうち、「繊維・衣服関係」は94機関と過半を占めている。
この背景には過剰供給と単価下落が同時に進む、過酷な市場環境が挙げられる。日本では1990年代以降、ファストファッションの流れに対応し、安く大量に生産できるラインが次々と海外に移行。衣服の国内生産率は現在3%程度にまで減少した。
経済産業省の報告によると1990年では約15兆円だった国内の衣料品市場規模は、2010年には約10兆円に縮小。その一方で同時期の国内供給量(国内生産と輸入の合算)は、約20億点から約40億点へ倍増し、国内での供給単価は20年間で3分の1にまで下がった。さらに総務省の家計調査によれば、20年間で各家計の衣料品購入単価は6割弱までにしか下がっておらず、市場に供給されたものの消費されない衣料品が相当量あると推測される。
このような状況下、限られた国内工場は海外よりも短い納期での高品質な製品生産や、めまぐるしく変わる市場のトレンドへの柔軟な対応が求められるようになった。その結果事業所の小規模化が進み、経産省によると2016年時点で国内縫製事業所のうち、従業員数29人以下の事業所が9割以上を占めている。
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