日本で世界を代表する製薬会社が育ちにくい訳 メディシノバの岩城裕一社長兼CEOに聞く

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最後の3つ目が進行型多発性硬化症です。まず、多発性硬化症(MS)とは脳や脊髄、視神経に病巣ができ、脳から全身への指令が適切に伝わらなくなる病気です。歩行や視覚、知力などさまざまな身体機能の障害症状が出ます。原因はよくわかっていません。患者数はアメリカでおよそ40万人、全世界では150万人程度とみられています。

「二次進行型」の多発性硬化症をターゲットに

MSには再発寛解型と、進行型があります。再発寛解型は症状が急に出たり治まったり(寛解)を繰り返すタイプです。多くの患者が最初に再発寛解型と診断されますが、繰り返しているうちに徐々に症状が進行するようになります。これを二次進行型といいます。一方、初めから寛解を経ずに時間とともに悪化していく場合があります。これを一次進行型といいます。

進行型の場合、約15%が一次進行型で、残りの85%が二次進行型ですが、二次進行型にも2つのタイプがあります。再発を伴う二次進行型と、再発を伴わない二次進行型で、多くの二次進行型は、この再発を伴わない二次進行型です。

進行型の多発性硬化症の薬は限られています。一次進行型にはロシュ社のオクレリズマブという薬が認可されていました。2019年の3月に、ノバルティス社と ドイツのメルク社の薬が二次進行型の薬として認可されたのですが、“二次進行型のうち、再発のある”患者さんだけを対象として認可されたのです。よって現在、進行型の75%を占める“再発のない二次進行型”の患者さんに効果のある薬剤はありません。

今年4月にMN-166の進行型多発性硬化症を適応とするSPRINT-MS(アメリカ国立衛生研究所=NIH=MS支援団体との共同連携プロジェクト)のフェーズ2b臨床試験サブグループ解析で、再発のない二次進行型MSで最も効果がありそうだと判明しました。つまり、私たちの薬剤は、現在は治療法がない75%の二次性の進行型の患者さんへの初めての治療薬になる可能性があるのです。

現在、フェーズ3臨床試験のデザインをFDAと協議しています。詳細な開発計画について、FDA とは、もっと突っ込んだ話し合いをする予定です。この薬はどこかに売ってもらう必要があり、認可の前に導出することになります。ただ、時間はまだあり、時期を決めるのはこれからとなります。

――最後に、5月に株価が急落する場面があり、その際リリースを出されましたね。

あるアメリカの法律事務所が、当社の役員および取締役によるフィデューシャリー・デューティ(受託者責任)違反の可能性について「調査を進める」ことや「その調査への賛同者を募る」といったことを公表しました。

これが日本語のネット上に書き込まれ、不安を与えたのか、まず日本の株価が下落しました。アメリカでは、このような訴訟をほのめかして示談金を獲得しようとする案件は、よくあることなので、アメリカ市場では、最初は株価に変化はなかったのですが、日本で下落したせいで翌日はアメリカでも影響がありました。

しかし、本件に関して公式な通知や連絡を受領した事実はありません。当社では役員や取締役がフィデューシャリー・デューティ違反に問われるようなことは一切していません。事実と異なることで株価が下落したのは残念です。

アメリカでは公開会社に対して、とくに株主総会前に、このような悪質な行為が多く認められますが、日本の株主の皆さんにこれ以上ご心配をおかけしないためにも今後の動向次第では法的措置を含めた断固たる対応を検討しているところです。

和島 英樹 経済ジャーナリスト

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わじま・ひでき / Hideki Wajima

ラジオNIKKEI元解説委員、2020年独立。同社や日経CNBCのキャスターとして活躍。

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