日本で世界を代表する製薬会社が育ちにくい訳 メディシノバの岩城裕一社長兼CEOに聞く
日本が逡巡しているうちに、戦略のある欧米は先へ行く
――医薬品について、日本と海外の決定的な違いはどこにあるのですか?
残念ながら、いまだに日本には「ナショナルフラッグ(国を代表する)」となる製薬会社が育っていませんね。武田薬品工業がその役割を果たすべきなのですが、アイルランドの製薬大手シャイアーの買収によって、ようやく「独自路線」から方向が変わった感じです。
では、なぜナショナルフラッグが必要なのでしょうか。かなり極端な例かもしれませんが、万が一、戦争や大災害などが起きた場合に、国内ですべての薬を賄わなくてはならなくなる可能性があるためです。そのためにも国を代表する「国策企業」としての、製薬会社が必要になるわけです。武田はM&Aで大きくなっても世界ではなお10位レベルです。スイスのロシュ、アメリカのファイザー、英国のグラクソ・スミスクラインなどにはまだ遠く及びません。
国策といえば、「遺伝子組み換え」についての対応などはその代表例として挙げられるのではないでしょうか。アメリカでは遺伝子組み換えによる医薬品が早くから台頭し、アムジェンやジェネンテックといった社員数が2万人もの大企業が育ちました。
これに対して、欧州では大腸菌の遺伝子から作る手法を問題視し、遺伝子組み換え技術に対しては反対に回りました。アメリカのほうは、トウモロコシや大豆など食品分野でも遺伝子組み換えで攻勢をかけているのは周知のとおりです。一方、日本では遺伝子組み換え食品にはなお警戒感が強いですね。
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