日本で世界を代表する製薬会社が育ちにくい訳 メディシノバの岩城裕一社長兼CEOに聞く

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一般の読者のためにわかりやすく言いますと、薬の特許の目的は独占性を得ることなのですが、大雑把に言って「自社の独占性を守る」ために、「将来的にライバルが入ってこられないよう特許申請」する場合もあります。つまり、承認されない可能性が高くとも、隙を与えない最大努力の一環で申請するケースです。

こうした大切な事情のすべてがわかって、審査官などとの交渉にも長けることは、製薬企業にとっては将来の命運を左右する大切な仕事です。特許出願人が特許庁と交渉するというのは、私たちのような小さい会社だからできることですね。特許弁護士に丸投げにすると、経費もかかるし、当事者意識が薄れて熱もわれわれほど入らない。

このように、特許戦略では、小さな会社のため、知財担当が不在で、臨床開発の当事者が対応していることが、かえっていい結果を生んでくれています。

松田氏は札幌医科大学大学院で医学博士号を取得した後に渡米、ハーバード大学で公衆衛生学修士を修了。アメリカでの臨床研修を経て、USC(南カリフォルニア大学)の私の研究ラボでの研究、さらにアメリカ企業との共同研究などを経てメディシノバに参加。昨年は、世界で最も権威のある総合医学雑誌の1つである『THE NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE』に共著論文が掲載されるという快挙を成し遂げた。

医療テレビドラマでも話題になった「インパクトファクター」というのがありますね。これは研究者にとって大きな意味を持つ、ポイントカードでいうところのポイント(点数)なのですが、この雑誌はインパクトファクターが最も高い雑誌として知られます。

新薬の開発を断念したり、既存の薬の中から、再度有望な治療適応症候補を探って開発するという、いわゆる「薬のリポジショニング」、つまり、別の薬効を探ることの重要性を再認識させたという意味で大きな影響を与えた論文でした。現場の医師の経験が、薬の開発に応用されたということは、多くの現場医師も創薬チームに参加できる可能性を示したということからも意義深いのです。

中国当局も認めたMN-001の「用法特許」

特許に話を戻すと、当社は2019年4月には中国でMN-001(開発コード)について、高中性脂肪症、高コレステロール血症などを適応症として、用法特許の承認を取得しました。中国ではこれまで物質特許が重んじられ、特定疾患を適応とした用法特許という概念は認められていませんでした。

中国で用法特許が取れたのは画期的なことで、ほとんどは、この重要性に気づいていないのではないでしょうか。世の中の誰もが中国特許庁がそんな用法特許を認めるわけがないと言っていた中で、当社の松田CMOだけが「答えはわかりません。とにかく申請してみましょう」と。結果は取れました。中国政府が大きく舵を切り出したと感じています。

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