イノベーションと人が評価を高めるカギ バイエル薬品(日本法人)カーステン・ブルン社長に聞く
――日本の医薬品市場をどう評価しているか。
就任以来、日本の医療制度を研究すると同時に、できるかぎり現場に出て顧客に会ってきた。大都市だけでなく地方にも行き、医療制度が実際にどう機能しているかを知ることに時間を費やした。その結果、日本市場が非常に魅力的であることがわかった。画期的な新薬の薬価を優遇する新薬創出加算など、研究開発志向の会社がさらにイノベーションに投資することを後押しする制度を政府が作っている。
戦略的にイノベーションに照準を合わせている当社にとって、最終的にイノベーションを患者さんに届けやすいという意味で魅力的だ。2012年は脳卒中のリスクを低下させる抗凝固薬イグザレルト、加齢黄斑変性症薬アイリーア、2013年は大腸がん薬スチバーガを新薬として発売。2013年は適応追加の承認も合わせると、5つの承認を取得できた。一方で政府は薬剤費を抑制しているので、イノベーションを持たない会社には厳しい市場だと思う。
事件を防ぐのは制度ではなく個人の価値観や倫理観
――イノベーション重視だと疾患啓発セミナー、研究委託など医師との関係が深くならざるをえないが、日本ではノバルティス社の医師主導臨床試験への不適切な関与が問題になった。不適切な関与は短期の成果達成を求める外資ゆえ起きた、という見方が一部にある。
ディオバンの件は外資も内資も関係ない。もちろん、業務は社内のルールに従って進める。たとえば、医師主導の臨床試験では医師と契約を結んで、どのような関係ならいいのか明記して透明性を担保している。ただ、どのような制度を作っても重要なのは個人の価値観や倫理観だ。
短期的な成果を追い求めるがために起きたのではなく、しっかりとした倫理的基準を持って仕事ができる環境を整えているかどうかだろう。 そもそも、当社は日本で100年以上の歴史があり、特約店など顧客からは「バイエルはまるで内資のようだ」と言われている。
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