イノベーションと人が評価を高めるカギ バイエル薬品(日本法人)カーステン・ブルン社長に聞く

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――ディオバン問題もあって製薬業界への評価は必ずしも好意的ではない。

日本だけでなく世界的に、業界として消費者とのコミュニケーションがうまくできていない気がする。医療従事者に絞ってコミュニケーションしてきたので、莫大な研究開発投資を通じた経済への寄与などを伝え切れていない。そのために「儲けすぎ」と思われている。

だからといって大々的なキャンペーンなどで直接消費者に訴えるのが得策とは思わない。日々の仕事を通して評価を高めることができると考えている。たとえば、疾患啓発により疾患の認知度が高まり、治療につながれば公共の利益とわれわれの利益が一致する。政府、医療従事者、患者さんとの協調が高評価につながる。一夜にして成し遂げられるわけではなく、一歩一歩進んでいきたいと思う

正しいモチベーションで動く企業風土に

――カギになるのは。

イノベーションと人だ。イノベーション、つまり製品を患者さんに届けるのは人。バイエルのミッションステートメントは「サイエンス・フォー・ア・ベターライフ」だが、重要なのは「フォー・ア・ベターライフ」。営利企業であることを否定しないが、つねに患者さんのベターライフのためにという正しいモチベーションに突き動かされて仕事をするという企業風土を作っていきたい。

――そういった人材をどう育成するか。  

ワークショップで社員が描いた絵

これまでとは少し違った試みによって、社員が会社に愛着を持てるようにしたい。昨年はトップ100人の管理職に対し「描く」をテーマとしたワークショップを実施した。

「バイエルはあなたにとって何を意味しますか」「バイエルにおいて何を一番大切に思っていますか」といった質問をした後、それをもとに3時間かけて絵に描いてもらった(右写真)。業績だけでなく、会社との感情的なつながりを醸成する取り組みだ。  

クリエイティビティを刺激したいという意図もあった。サイエンスが基本なのでわれわれはつい理性的、合理的に考えがちだが、イノベーションを生み出すには右脳と左脳の両方を使わねばならないからだ。その結果、さまざまな絵ができた。これは社内に多様性が存在するということで、多様性もイノベーションの元になると考えている。

 

筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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