LINE MUSICが「赤字続き」でも踏み止まる理由 音楽配信各社が抱える"悩ましい事情"

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一方、もしアーティストやレコード会社がストリーミングサービスへの楽曲提供を決断するなら、複数社に楽曲を提供したほうが合理的。なぜならユーザーへのリーチがそのぶん広がるからだ。例えば、5月14日から小田和正の全楽曲のストリーミング配信が始まったが、主要な配信事業主がずらりと名を連ねていた。こうして「横並び」は広がっていく。

【2019年6月27日21時55分追記】初出時、配信事業主に誤りがありましたので、上記のように修正しました。

もちろんサービス各社が差別化のために、特定のアーティストの楽曲を「独占配信」することは可能だ。実際、6月16日にApple Musicが安室奈美恵の全楽曲の独占配信を開始したばかり。ただ、そうした独占契約には莫大な費用がかかり、手が出しにくい。

「熱烈なファンたちはすでに好きなアーティストのCDを持っていることが多く、(独占配信は)新たにユーザーを引き寄せる施策として割に合わない」(業界関係者)。

ストリーミングサービスは分配制のビジネス。再生回数に応じて配信事業主があげた利益を、各レコード会社で分け合うモデルとなっている。その際、分配の指標となるのは再生回数だ。

東洋大学の安藤和宏教授が、各配信事業主の資料に基づいて計算したところ、配信事業主が得られる利益は売上のおよそ28.8%。原価として計上される売上の6割強については、レーベルに対して支払う許諾料(40.5%)や著作権(7.7%)、原盤印税(15%)などが含まれる。

ところが配信事業主が得る3割弱の利益を、認知度向上のためにかかる多額のプロモーション費用が削り取っていく。

新規ユーザーを課金へ誘導するために設けられる、無料体験期間にかかる費用もばかにならない。ユーザーにとってはタダだが、楽曲を配信していることに変わりはなく、サービス提供各社は許諾料をレコード会社に支払わなければならない。

差別化しにくいサービスに、利幅の薄いビジネスモデル、そして新規顧客獲得のために削れない多額のプロモーション費用――。「さながらチキンレース」とある業界関係者は嘆く。

シェアを取りに行くLINEの勝算

「いい意味でガラパゴス化した日本オリジナルのサービスを提供したい」と語る高橋明彦・LINE MUSIC取締役COO(撮影:梅谷秀司)

日本の音楽ストリーミング市場は、今後いったいどうなっていくのか。和製サービス各社はどうやって生き残りを図るのか。

日本における圧倒的王者であるApple Musicを追うLINE MUSIC。国内シェア1位の座を狙い、さらなるユーザー増に向けて勝負をしかける。

「日本のストリーミング市場がさらに伸びることは明白。だからこそ、まずはマーケットを取ることを重視している。ここでユーザーをしっかりと獲得できなければ終わりだ」とLINE MUSIC取締役COOの高橋明彦氏は語る。

彼らの強みは、8000万人の月間アクティブユーザーを誇るLINEという圧倒的なユーザー基盤だ。その特性を全面に打ち出し、今なおCD売り上げに依存するレコード会社やアーティストらを地道に説得、獲得してきた経緯がある。

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