LINE MUSICが「赤字続き」でも踏み止まる理由 音楽配信各社が抱える"悩ましい事情"

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小野氏は「ビジネスアライアンスはお互いにとって有益。単に広告を出すのではなく、こうしたコラボレーションを通じて認知度を上げていきたい」と意気込む。

システム費の削減の取り組みも独特だ。「多くの場合、楽曲のメタデータは外注するもので、コストがかかってしまう。だがAWAではエイベックスのノウハウを活かすことで、メタデータを内製化し費用を抑えた」と小野氏は語る。

データサーバーの維持費についても地道なコストカットを行うが、ここで活きているのが、サイバーエージェントのノウハウだ。AWAには3つの尺と4つの音質のデータが楽曲ごとにそれぞれ存在する。そうした莫大なデータを無駄なく効率的に保管することで、本来は月3000万かかる維持費を半分にまで抑えることができたという。

こうして、AWAは売り上げ増と赤字削減を同時に追求。2018年3月期の売上高は前年同期比49.8%増の21億円、赤字幅も着実に削減している。

まずはシェア奪取を優先させるLINE MUSICは、売上が大幅に伸びているものの赤字幅は拡大の一途。2018年12月期の売上高は前年同期比81%増73億6169万円となる一方、20億円超の当期純損失を計上。「今は投資の期間。今年から来年にかけて勝負の時になる」と高橋氏は表情を引き締める。

これから爆発的に広がるのは間違いないと言われる、日本の音楽ストリーミング市場。その爆発がいつになるかまだ見えない中、今優先させるべきは、シェアか、利益か。各社は今、それぞれの新たなステージに突入しようとしている。

佃 陸生 東洋経済 記者

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つくだ りくお / Rikuo Tsukuda

不動産業界担当。オフィスビル、マンションなどの住宅、商業施設、物流施設などを取材。REIT、再開発、CRE、データセンターにも関心。慶応義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)修了。2019年東洋経済新報社入社。過去に物流業界などを担当。

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