「教育虐待」に気づかない教育熱心な親たちの闇 親から子への「ソフトコントロール」にご用心
さらに昨今は、親向けの「コーチング」などの講座や書籍が多数ある。教育熱心な親が、コーチングを学ぶのである。コーチングとは本来、その人がもっている力をその人の望む方向に引き出すために行うサポート。しかし「わが子を賢く育てたい」と思う親が何の悪気もなくその技術を応用すれば、子どもをコントロールすることに使えなくもない。
暴力や暴言で威圧しなくとも、真綿でくるむように子どもをソフトコントロールできてしまうのである。子どもからしてみれば「のれんに腕押し」で、反抗するきっかけすら与えられない。反抗期が漂白される。
反抗期がないということは、多感な時期に、精神的な自立を果たせないということである。私が取材する中学校や高校の教員たちは一様に「最近は反抗期がない子どもが増えている。それはそれで心配」と口をそろえる。反抗期がないまま思春期を終えてしまうと、大学生になってから、または社会に出てから、精神の不調を訴えることも少なくないようなのだ。
子どもの意思を軽視し、親が子どもの人生を操り、子どもに生きづらさを感じさせるとするならば、それも広義の「教育虐待」といえるのではないかと、取材を通して私は思った。教育虐待が、うっすらと見えにくくなっているのだ。
「子どもシェルター」を運営する弁護士は、「『教育虐待』は子どもに対する『人権侵害』です。教育虐待は親子の『共依存』から始まります」と説明する。そして、親は自分の胸に手を当てて、次の4点を自分自身に問うてほしいと言う。
(2)子どもの人生は子どもが選択するものだと認められていますか?
(3)子どもの人生を自分の人生と重ね合わせていないですか?
(4)子どものこと以外の自分の人生をもっていますか?
これらに自信をもって「YES」と答えられない親だとすると、教育熱心であるがゆえに教育虐待の闇に吸い込まれる危険性がある。
中学受験生はまだまだナイーブ
とくに中学受験においては注意が必要だ。
昨今は「中学受験は親の受験」と言われてしまう。中学受験勉強における子どもの成績は、親のサポートの良しあし次第であるという言説がまことしやかに広まっているため、親の肩に過度な力が入ってしまっているのだ。
とくに高校受験や大学受験で成功体験をもつ親が、その感覚で子どもに受験指導をすると、簡単に子どもを潰してしまう。
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