青森―福島「潮風トレイル」はどんな歩道なのか 被災地をつなぐ道沿いに始まる新たな試み

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この小舟によるルートを行きたい人は、5日前までに、名取トレイルセンター(電話022-398-6181)に電話し、宮戸地区→浦戸諸島の寒風沢(さぶさわ)へ向かう場合は宮戸地区の舟、寒風沢→宮戸地区に渡る場合は、寒風沢の舟を手配してもらう。漁業関係者の協力で、仕事の合間に可能な人が舟を出してくれる仕組み。運賃は、大人は1人3000円、子ども(小学生以下)は1人1000円。

しばり地蔵(撮影:河野博子) 

仙台からJR仙石線に乗り、本塩釜で降りて約8分歩いてマリンゲート塩釜へ。ここから浦戸諸島の4つの島を結ぶ塩竃市営の旅客船に乗り、寒風沢へ向かった。

江戸時代、寒風沢は、年貢米を千石船に積み替え、江戸まで運ぶ仙台藩の港としてにぎわっていた。それが証拠に、小高い日和山には、「しばり地蔵」がある。遊郭の遊女たちが客の船乗りを足止めするため、天気が荒れるよう祈ったという言い伝えがある。

予定の午後3時、寒風沢の船着き場に、元漁師の鈴木正徳さん(68歳)が、青い旗をたてた小舟で現れた。「あなたはこのルートのお客さん第1号。私の後輩が写真をとりたいというので、ちょっと向かいの野々島に寄りたい。いいですか」という。えーっ、取材する側が写真に撮られる? 後輩とは、名取トレイルセンターからの連絡を受けて誰が舟を出すかの調整役の遠藤勝さん(56歳)だった。ま、いいか。ついでに話を聞けるし。

人口減少の一途をたどる島

「浦戸諸島の4つの島に1960年ごろには2000人が住んでいたけど、いまは400人を切っています。高齢化が進み人口が減る島を、なんとか観光で活性化できないか、といろいろやってきました」と、遠藤さん。月の半分は漁船のエンジンの販売や修理、あとの半分を、塩竃市が管轄する島と島の間の渡し舟の仕事をしていたが、5年前からは、カヌーや島巡りなどの観光事業も始めた。

浦戸諸島への思いを語る鈴木さん(左)と遠藤さん(撮影:河野博子)

私を乗せてくれる舟の鈴木さんは、約40年前に漁師を辞め、車の修理会社に勤めていた。今は東日本大震災後に認知症が悪化した90歳の母を介護しながら、市の渡し舟の仕事をしている。「あの島には長さ40キロメートルに及ぶ海底洞窟がある」といった驚きの説明を聞きながら、東松島市宮戸地区に向かった。

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