「働かないオジサン」がいない会社の工夫 40歳に訪れる「こころの定年」にどう対処するか

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中高年社員は、このような切り替えが求められているのに、前半戦と同じペースで走ろうとするから、働かないオジサンになってしまう面がある。今まで述べてきた会社の仕組みだけの問題ではないのである。

2012年に、国家戦略会議のフロンティア分科会が「40歳定年」を提言したが、マクロ面が中心で、社員のライフサイクルまで踏み込めていなかったので、抽象的な議論のまま終わってしまった。

「こころの定年」にどう対処するか

私は、ここ10年ほど中高年サラリーマンに対する取材を繰り返してきた。その際に、会社組織に適応している会社員でも、40歳前後から揺れ始める人が多いことに気づいた。

揺れるきっかけは人それぞれで、漠然と「このままでいいのだろうか」と考え始める人もいれば、自分の病気、勤める会社のリストラや合併、親の介護、子どもの問題が契機になっている人もいる。また、震災や友人の死がきっかけになった人もいる。

先ほど述べた会社人生の前半戦と後半戦の境目が、このあたりにある。40歳というのは、会社員生活の折り返し地点であると同時に、人生80年の中間地点でもあるというのが興味深い。また管理職、非管理職といった会社での自分の立場が明確になる時期にも符合している。

この時期の心の揺れを具体的なインタビューでの発言から集約すると、「誰の役に立っているのかわからない」「成長している実感が得られない」「このまま時間が過ぎ去っていいものだろうか」という3点になった。

私は、このように組織で働くことの意味に悩む状態を「こころの定年」と名付けてみた。死を迎えるときが「人生の定年」、60歳(65歳)が「就業規則上の定年」であるとすれば、それより前に訪れる、この「こころの定年」とどのように対峙するかが、とても大切であると考えている。働かないオジサンは、何らかの意味で、この「こころの定年」に正面から向き合っていないような気がするのである。

今後は、連載の軸足を会社の仕組みから、社員個々の会社人生に移しながら、進めていきたい。どのように「こころの定年」を越えるかについても、考えていくつもりである。

楠木 新 人事コンサルタント

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くすのき あらた / Arata Kusunoki

1954年神戸市生まれ。1979年京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係を中心に経営企画、支社長等を経験。47歳のときにうつ状態になり休職と復職を繰り返したことを契機に、50歳から勤務と並行して「働く意味」をテーマに取材・執筆・講演に取り組む。2015年に定年退職した後も精力的に活動を続けている。2018年から4年間、神戸松蔭女子学院大学教授を務めた。現在、楠木ライフ&キャリア研究所代表。著書に、『人事部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)、『定年後の居場所』(朝日新書)、『定年後』『定年準備』『転身力』(共に中公新書)など多数。

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