アップル「スマホ値引き規制」に抱く強い危機感 今後iPhoneは「定額制」になるかもしれない
2018年にはやや価格を抑えたiPhone XRを投入したが、8万5000円をわずかに切る価格に設定されており、iPhoneの高価格路線は依然として続いている。それでもiPhoneが日本で5割のシェアを下回らないのは、iPhoneが通信会社や販売店にとって売りやすい人気端末だったからだ。
昨年9月のiPhone XS発売時、64GBモデルの端末価格はApple Storeで11万2800円(税別)だった。これをNTTドコモの月々サポートなどを利用すると、各社とも7万円以下の負担に抑えることができた。こうして、おおむね2年に1度の買い換えを、月々3000円以下の少ない負担で実現してきた経緯があった。
なお、アメリカのアップルが提供している、毎年iPhoneを乗り換えられるいわばiPhoneのサブスクリプションモデル「iPhone Upgrade Program」を利用すると、64GBのiPhone XSで月々の支払いは49.91ドル(月額約5500円)。これに比べると、日本の携帯電話会社を通じたiPhone販売は1500円以上安く設定されていることがわかる。
しかし今回の総務省の案では、2万円以上の値引きができなくなるため、iPhone XSの現状の価格でいくなら、9万円以上の負担となることを覚悟しなければならなくなる。24回払いを選んだ月々の負担額は1000円以上上昇することになるだろう。さらに12〜24カ月後の下取り価格を保証する乗り換えプランについても、値引きと同様の「利益の提供」にあたるため、事実上機能しなくなる。
ただし、こうした端末割引き規制は、アップルのみが影響を受けるわけではない。日本で高付加価値スマートフォンを販売している日本のソニーや韓国のサムスンなども、端末価格の上昇が起きる。
とくにサムスンは、折りたたみスマートフォンや5G端末などを、日本においても先駆けて投入する期待もある。通信キャリアとしても、最新端末でしか5Gサービスを利用できない点からして、2019年秋以降に登場するスマートフォンを拡大させたいはず。しかしその思惑を加速できない環境が整ってしまった。
iPhoneには「在庫モデル」が存在しない
端末値引きの制限は各社等しく行われることになる。しかしアップルが「iPhone規制」と捉えている理由は、端末値引きに課せられたもう1つの条件の存在だ。
端末の値引きの上限は、在庫端末や製造中止端末で緩和される例外が用意されている。最終調達日から24カ月が経過した在庫端末は、5割までの範囲で割引が可能となる。また、製造中止済みの端末は、最終調達日から12カ月経過で5割まで、24カ月経過で8割までの割引が許される。
Androidスマートフォンはほぼ半年に1度の頻度で世代が変わり、在庫端末、製造中止済みの端末が店頭に残り、2万円を超える割引対象となる。結果、iPhoneと同じ販売価格を設定していたとしても、販売時の割引規制の緩和によって、より安く消費者が購入できることになる。
しかしアップルは、3年前に発売したiPhoneも、最新端末とともに併売しており、今も製造が続けられている。例えば2019年6月現在であれば、最新端末は2018年発売のiPhone XS、iPhone XS Max、iPhone XRとなるが、2017年発売のiPhone 8・8 Plus、2016年発売のiPhone 7・7 Plusもラインナップに残っており、製造が続いている。
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