就職3日で自殺を図った男が見た「絶望の限界」 35歳元ひきこもり男性が長年抱えてきた葛藤

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現在、ひきこもり当事者の声を発信する『HIKIPOS』の雑誌の編集長をしている35歳男性が、自身もひきこもったときに、どう立ち直ったのか話を聞いた(写真:taa/PIXTA)  
現在、全国に100万人以上いると推測されるひきこもり。近年、中高年層が増加しており、内閣府は今年初めて、40歳以上が対象の調査結果を公表した。一般的には負のイメージがあるひきこもり。その素顔が知りたくて、当事者とゆっくり話してみたら……。

ひきこもり当事者・経験者が発信する雑誌『HIKIPOS』編集長の石崎森人さん(35)。現在、5号まで出ているこの雑誌には毎回、特集がある。例えば、3号では「ひきこもりと恋愛・結婚」、4号では「ひきこもりと『働く』」などで当事者たちが原稿を書いており、非常に興味深い。

東京郊外の駅前で会った石崎さんは、にこやかで知的な印象。穏やかそうに見えるが、激しい精神的葛藤を経てきたと話し始めた。

生まれながらに感受性が強かったのか、あるいは抑圧的な父親と心配性な母親とに厳しく育てられたからなのか、子どもの頃から「家は、安心できる場所ではない」と実感していたという。兄と弟に挟まれた次男だから自由に育ったのかと思ったが、彼は繊細すぎるくらい繊細だった。

イジメを目撃し「人間は腐ってる」

小学校に入学するころバブルが崩壊し、テレビでは「同情するなら金をくれ」とドラマ『家なき子』で安達祐実が叫んでいた。石崎さんの家も周りも自営業者が多く、バブル崩壊の影響で大人はピリピリしていた。

当記事は「週刊女性PRIME」(運営:主婦と生活社)の提供記事です

それが子どもにも影響したのか、入学してすぐイジメを目撃した。それを見て彼は「人間は腐ってる」と厭世観(えんせいかん)を強めていった

「家では父親が口達者で、とにかく怖くて、心安まるときがなかった。否定されながら育ちました。子どもはほかの家庭を知らないから、自分の家や親が絶対だと思ってしまう。父が言うように自分をダメなやつと思っていて、ずっと自分のことが大嫌いでした」

不登校になりかけたが、友人が迎えに来てくれてなんとか凌(しの)ぎ、中学に上がった。

「勉強も運動もできない劣等生でした。中学に入るとすぐ、神戸連続児童殺傷事件、通称『酒鬼薔薇事件』が起こった。犯人は1つ年上。インパクトがありましたね。家ではゲームは禁止、門限があって自由に遊べないなどと規律が厳しくて気が休まるヒマもなかった。反発したり、親を恨む前に、自分を押し殺す習慣がつくんです。いつも親の顔色をうかがって自分を殺し、そんな自分を嫌いになっていく

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