中国の「代言人」広告
こうしたグローバル・ブランディングでの有名人の起用法と対照的なのが、中国の広告です。中国では、広告主が契約する俳優や歌手、スポーツ選手などの著名人は「形象代言人(シンシャンダイユエンレン)」と呼ばれ、企業や製品のイメージキャラクターを務めます。名声と権威に弱い中国の消費者に対しては、テレビや映画で主役を張る有名タレントの影響力を借用して購買へと誘導するのが、最も手っ取り早いマーケティング手法なのです。中国の典型的なグラフィック広告のパターンは、商品カットの横ににこやかにほほ笑むタレントを配し、そこに必ず名前のサインが添えられています。
日本の「外タレ」広告
日本もかつては中国同様、ハリソン・フォード、ジョディ・フォスターなどのいわゆる「外タレ」が盛んに起用された時代がありました。ただし、日本の広告クリエーティブでは、タレントをそのままスポークスマンとして使うよりも、「あの人がここまでやるのか」という演技を、例えばアーノルド・シュワルツェネッガーにやらせてしまう、といった演出がよく見られました。俳優のイメージを大事にするアメリカではあり得ないことと言われたものです。
中国人俳優とのからみで言うと、サントリーが2010-11年、ウーロン茶のCMで、中国のナンバーワン女優である范冰冰(ファン・ビンビン)に、ほぼ「すっぴん」でカレーを食べさせラーメンをすすらせるという演出をしていました。しかもBGMは「アラレちゃん」や「うる星やつら」のアニメソングで、中国のファンが見たら卒倒しそうなCMに仕上がっていました。同じくサントリーウーロン茶の2004年の広告では、現在中国で資生堂「Aupres」の広告に出演中の人気女優、スン・リーも起用されています。当時既に新進女優としての地歩を固めていた彼女も、日本では単なる演技者として使われていました。
「代言人」から「パートナー」へ
いずれにせよ、消費者が成熟するにつれて、いわゆる「タレント広告」は効きにくくなってきます。タレントは、金で雇われて指示されるままにスポンサー企業の宣伝文句を「代言」しているに過ぎないことがわかってくるからです。これからの企業とタレントとの関係は、ブランド哲学を共有した上で一緒に新たな価値を産み出していくような、パートナーシップ型が増えていくでしょう。アシュトン・カッチャーの真剣な製品プレゼンテーションを見て、ますますその思いを強くしました。
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