ブランド構築を指揮するグローバルCMOの存在
このPRイベントでMCをしていたのがデイヴィッド・ローマン氏です。IT企業投資のプロでもあるカッチャーが、あまたあるオファーの中からレノボを選んだのは、彼の存在抜きには考えられません。
ローマン氏はHPのワールドワイド・マーケティングコミュニケーション担当VPだった2010年に、レノボに引き抜かれる形でCMO(チーフ・マーケティングオフィサー)に就任しました。アメリカの一流PCメーカーから中国の新興IT企業への転身は、リスク含みの決断だったでしょうが、IDCの統計によると2013年の世界のPC出荷台数シェアは18.6%のレノボが1位で、2位に転落したHPとの差を広げています。アメリカ市場でもレノボはアップルを抜いて3位まで上がっていますから、どうやらローマン氏の判断は正しかったようです。
実は、私はレノボのグローバルブランド・キャンペーンの企画段階で何度かローマン氏と話をしたことがあります。その後、彼がアメリカの広告会社を使って始めた「Lenovo for those who do」キャンペーンは、商品広告にも活用されて、レノボのブランドイメージ向上に貢献していますが、まさかアシュトン・カッチャーまで口説き落とすとは、恐れ入りました。
グローバル市場での復権を目指す日本企業も、何でもかんでも内製化せずに、ローマン氏のような人材を活用してはどうでしょうか。ついでに言うと、彼はHPの前は、アップルで「ワールドワイド・広告&ブランドマーケティング担当VP」を務めていた人物です。
コービー・ブライアントもレノボと契約
レノボはまた、スポーツ界の超大物でNBAのスーパースターであるコービー・ブライアントとも、2013年初めに、中国と東南アジア市場のモバイル機器広告の契約を結びました。これは、レノボが推進する「PCプラス」戦略の基幹商品であるスマートフォンの拡販のため、ターゲットである若者に対して、若々しくダイナミックなブランドイメージを打ち出すための投資です。
この契約がカバーするASEAN諸国はレノボの重要市場となっていて、PCではマレーシアの18.7%を筆頭に、シンガポール、フィリピン、タイ、インドネシアで既に二桁の市場シェアを握っています。コービー・ブライアントの力を借りて、スマホやモバイル機器でも勢力を伸ばそうとしています。
コービーは、広告への出演だけでなくブランド・アンバサダーの役割も務めます。2013年8月11日には北京の「Meet Kobe」イベントに出席して、「レノボのかっこいいスマホのおかげで世界の若者とのダイレクトコミュニケーションを広げ、深めていくことができて嬉しい」などとスピーチしています。
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