スマホ4000万台減でもファーウェイ制裁甘い? 売り上げ横ばい予想で遠のく過度な悲観論

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当初の悲観論に比べると、任氏のいう売上高の減少幅はライバル社からすると期待外れだった。実際、2018年のファーウェイの売上高は1071億ドル(約11兆9000億円)で、任氏が語った「今年と来年の売上高は1000億ドル(約11兆1000億円)程度」というのは、売り上げ横ばいを意味する。成長は鈍化するが、売り上げが減少するわけではない。

今回、任氏が落ち込むと話したのは海外に出荷しているスマホ1億台のうちの4000万台。中国国内でも1億台以上の売り上げがあり、中国では一部でファーウェイを助けようとする愛国的な動きも出ている。「中国国内のファーウェイのシェアは高まる一方」(前述の中国系スマホメーカー幹部)だ。13億人の市場規模や、スマホ市場の拡大が続く東南アジアやアフリカなどの新興地域に強いことも、ファーウェイに味方している。

先進国における通信基地局などの設備は、ファーウェイの競合であるエリクソンやノキアに一部流れているが、新興国などでは北欧2社より価格が安いファーウェイの需要が続くとみられる。

電子部品メーカーへの影響は限定的

「今後2年で売上高は横ばい」という任氏の発言は、むしろ自信の表れではないかという見方も出ている。ファーウェイと取引がある台湾の電子部品メーカーは「アメリカの制裁をもってしても、ファーウェイに与えられた打撃はこの程度か」と話す。台湾のスマホメーカー、エイスース(ASUS)の幹部は「むしろファーウェイがアメリカの技術に依存せず、自前で(技術を)賄えることが明らかになりつつある」と警戒感を示す。

アメリカの制裁によって業績への影響が懸念されていた日本の電子部品各社への影響も限定的になりそうだ。村田製作所やTDKなど、日系電子部品各社のファーウェイ向け売り上げは4~8%程度にとどまる。両社とも業績への影響はあったとしても営業利益ベースで数十億円程度だろうとみられる。2019年3月期の両社の連結営業利益は村田製作所が2668億円、TDKが1078億円で、大きな打撃とはいえない。

ファーウェイの減産が明らかになった翌18日の株価は日経平均が0.71%下落した中、TDKが0.13%上昇。村田製作所も0.51%の下落だったが、取引時間中に一時0.95%上昇するなど、任氏発言は織り込み済みだったようだ。

アメリカによる制裁は、AI(人工知能)やロボティクスなどに拡大していくとの観測も出ているが、任氏は対談中に「2021年にわれわれは再び輝くチャンスがある」と宣言した。アメリカとファーウェイの戦いは始まったばかりで、4000万台の減産は最初の指標にすぎない。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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