ホルムズ海峡攻撃で挙がった「真犯人」の名前 「オバマを超えた」と言いたいトランプの意地

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1、 ホルムズ海峡封鎖はない。タンカー運行停止もなく、石油危機も起こらない。

なぜかといえば、1980~1988年にかけて8年間も続いたイラン・イラク戦争の際、ペルシャ湾を航行する船舶がたびたびイランから攻撃を受けたことがある。しかし、ホルムズ海峡の閉鎖はなかった。船舶も船体、乗組員、積み荷を担保する海上保険に守られながら、運航した。しかもイランには大きな誘惑があったにもかかわらずだ。

イラクを資金で支援していたのは、サウジアラビア、UAE、クウェートなどのアラブ産油国だった。ホルムズ海峡閉鎖で、石油・ガスの輸出という資金源を遮断することが可能だったが、それでも踏み切らなかった。

2、アメリカ、イランともチキンレースを継続中だが、戦争はない。

イランは受け身の立場だ。「現状でイランにできることは何もない」(近藤百世氏)。核合意順守を、英仏独や中国、ロシア、インド、日本まで支持しているが、イランにとって本当に頼れる国はない。かろうじて今回の安倍首相訪問で、日本を挟んでアメリカとイランの間にホットラインができれば、日本やイランにとって大きな成果になるものの、未知数である。

イランがアメリカとの戦争を回避したいのは当然だが、アメリカも現在の緊張感を形成している状況はブラフ(脅し)に見える。

2019年1月の一般教書演説ではトランプ大統領本人が、「2001年からアメリカは、アフガニスタンやイラクなどに介入して7兆ドルを費やしたが、何の成果もなかった」という趣旨の言葉を語っている。自身の言葉を忘れてほしくない。

「オバマ時代」否定一色のトランプ大統領

3、トランプ大統領がオバマ前大統領の主導した核合意に変わる「新核合意」を狙う。

トランプ大統領の内外の政策・発言は、「アンチ・オバマ前大統領」一色だ。イラン核合意からの離脱もその1つ。トランプ大統領の脳裏にある新しいイラン政策は、①イランの核開発をオバマ時代の核合意より厳しいものにする、②イランがシリア、レバノン、イエメンなど中東地域の関与を縮小することを約束させる、だろう。

これが実現すれば、トランプ大統領の主観では、「俺はオバマを超えた」と優越感に浸れる。

もちろんイランは、「アメリカと交渉するつもりはない」(ハメネイ師)と一蹴するが、穏健派といわれるロウハニ大統領の発言は微妙に揺れるだろう。交渉力に長けたペルシャ商人の国だけに、これからの交渉が注目される。口約束のディール(取引き)でトランプ大統領から圧力をかわせるならば、イランの選択肢になる。

最後に、今回のタンカー攻撃とは別に、指摘しておきたい点を1つ。国際社会が合意したイラン核合意を一方的に離脱したアメリカによる、理不尽ともいえる経済制裁によって、イランの国民が困窮に耐えているという事実もまた忘れてはいけない。

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