ホルムズ海峡攻撃で挙がった「真犯人」の名前 「オバマを超えた」と言いたいトランプの意地
ならば犯人は誰か。
ミサイルだと仮定すれば、3者しかない。まず、容疑者として真っ先に浮上したのは、イラン軍か革命防衛隊だ。アメリカやイギリスの情報筋は、イラン犯人説だ。アメリカ以外で、イラン犯人説を唱えたイギリスに対し、イラン政府は外交ルートで抗議した。
日本の安倍首相という賓客を招き、最高指導者と会談させたイランに、どのような動機があるのか。ハメネイ師と安倍首相に恥をかかせるタンカー攻撃など、動機に乏しいと考えるのが普通だろう。イラン情勢に詳しい中東調査会の近藤百世研究員は、「経済制裁で追い詰められているイランが国際社会を挑発する行為をすることは考えにくい」と分析する。
次に、イラン政府・軍を容疑者からいったん外すと、浮かぶのは、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の連合勢力。資金、配下、ノウハウがある。動機はイランを犯人にして、アメリカにイランを攻撃させること。“謀略説”の1つだ。
「Bチーム」という名称がある。アメリカにイランを攻撃させることに、強い動機を持つ人たちの俗称である。ボルトン大統領補佐官(安全保障担当)、イスラエルのネタニヤフ首相、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子、そしてサルマン皇太子と親しく師匠格でUAEのムハンマド・ビン・ザイド皇太子だ。
ただこの話には難点がある。イランを窮地に追い込むと、最後はホルムズ海峡封鎖という事態になりかねない。そうなると、サウジアラビアやUAEは、原油とガスの輸送手段を失う。自分で自分の首を絞めることになる。
3番目は非難したアメリカによる“自作自演”である。アメリカの歴史をさかのぼると、今や否定されてしまったイラク大量破壊兵器保有説、ベトナムにおけるトンキン湾事件、米西(スペイン)戦争を起こしたキューバ・ハバナ湾での戦艦メイン号沈没事件など、今日では歴史家が明らかに「アメリカの謀略」だとする事件が戦争の引き金になっている。つまり、アメリカ国内の世論を戦争に誘導する謀略だった。
もちろん、アメリカが直接手を下すことはリスクが高いため、ペルシャ湾岸にいる配下や勢力にやらせたと考えることが可能である。アメリカ謀略説とすると、動機は何だろう。「日本は出しゃばるな」という警告に加えて、イランにさらに軍事的圧力をかけることかもしれない。
イラン内部の跳ね上がり分子が起こした?
そして4番目はイラン内部犯行説だ。イラン政府・軍でないが、革命防衛隊の跳ね上がり分子がミサイルを発射した、というシナリオになる。駐イラン日本大使経験者から印象深い話を聞いたことがある。イランの街頭にはタブロイド紙があふれており、「イランは意外だが日本より言論の自由と多様性がある。理由は政権をめぐる派閥抗争が激しいので、多様性が紙面に出るから」(大使経験者)。
今回、日本のタンカーが攻撃された海域は、オマーンの対岸にあるイランの主要港の1つ、ジャスタ港に近い。革命防衛隊の縄張りだ。小型船舶を活用しバーレーンに基地を置く、アメリカ第5艦隊を牽制する位置にある。ハメネイ師の意図を忖度(そんたく)した革命防衛隊の跳ね上がりが、何らかの手柄を立てたい動機で、日本タンカーと知らずに攻撃してしまったという臆測である。
以上、大胆に推測した仮説の中では、実は4番目に一定の整合性があるかもしれない。
ここから、この事件を受けて、今後の展開を大胆に予想したい。
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