ホルムズ海峡「タンカー攻撃」で日本への影響は 依存度は原油8割、LNGは2割弱で供給懸念も

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その一方で、LNGは石油や液化石油ガス(LPガス)と異なり、備蓄が困難だ。石油の備蓄量(国家備蓄と民間備蓄の合計)が222日分、LPガスでも約90日分あるのに対して、LNGではせいぜい20日程度。放っておけば気化してしまうため、在庫として貯蔵しておくことが難しいことが理由だ。

LNGと比べて、原油は中東からの輸入依存度が圧倒的に高い。わが国の原油輸入量に占める中東依存度は実に約88%(2018年)。JXTGホールディングスなど元売り各社は、自社調達に占める依存度について開示していないが、総じて同じような比率だとみられる。各社とも「情報収集している段階。国の政策に基づいて従来から備蓄を進めてきた」とする。

年1700~1800隻通過で、対策に限界も

日本船主協会によれば、「攻撃があった海域に近寄らないことや、注意が必要な海域はフルスピードで航行することが主な対策となる」(大森彰・常務理事)という。ただ、「ホルムズ海峡を通過する会員各社の船舶は年間に延べ1700~1800隻。そのほとんどがタンカー」(同)だといい、対策に限界があることも事実だ。

今後の見通しについて、日本貿易振興機構・アジア経済研究所の福田安志・上席主任調査研究員は「タンカー2隻への攻撃は、アメリカの対イラン制裁への反発とみられる。今回は大事に至らなかったが、攻撃がエスカレートする可能性もある」と危惧する。

ある市場関係者は「ホルムズ海峡は世界の原油の約2割が通過する大動脈。今のところ、原油市場は比較的平静を保っているが、再び攻撃があれば、供給に懸念が持ち上がる可能性がある」と指摘する。

アメリカ軍の軍事力の高さから見ても、ホルムズ海峡の長期封鎖の可能性は低いと見られている。タンカー攻撃を受けた14日の原油価格(WTI)は1バレル52ドル近辺で落ち着いているが、市場関係者は事態の行方を固唾をのんで見守っている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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