任天堂はなぜ3期連続の営業赤字に沈むのか ゲームの"王者"が直面する事業モデルの瀬戸際

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3DSは国内が好調だったが、海外の不振をカバーしきれず

欧米では「ニンテンドー2DS」というエントリーマシンを投入したり、Wii Uの実質値下げに踏み切ったりと、認知度向上、普及に努めてきたが、実ることはなかったようだ。

為替レートの変動によって生じた営業外利益の押し上げによって、経常利益は黒字を確保するものの、米国での販売不振を受け、米国子会社が繰延税金資産の取り崩しを余儀なくされるため、純損益は従来予想の550億円の黒字から250億円の赤字に転じる。

純損失に転落するため、任天堂の株主還元政策からすると、年間配当は無配となるはずだが、財務基盤が盤石であることから、100円配を実施する予定だ(従来予想は260円)。

1月末に中長期方針を発表

岩田社長はいかなる手を打つのか

岩田聡社長は「打つ手がなくて困っているわけではない。むしろ、やるべきことは明確」と、2014年度の業績回復に向けて自信を見せる。と同時に、「ハードを2万~3万円で売り、ソフトを5000~6000円で売るという事業構造については、このまま継続できるかを疑うべき」と、新たな事業モデルをすでに考えていることも示した。

1月30日には経営方針説明会を開き、年末商戦の不振を踏まえた短期的な営業戦略に加え、今後のゲーム開発やIP(知財)戦略、新興国への取り組みなど中長期的な課題などを発表する予定である。

今回の下方修正が示しているのは、ゲーム専用機離れではなく、任天堂がゲームファンをきちんと取り込めていないことだ。今後、圧倒的に面白いソフトを生み出す体制を作り出せるか、専用機ならではの娯楽を提供できるか。30日にその方向性が見えるはずだ。

筑紫 祐二 東洋経済 記者

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ちくし ゆうじ / Yuji Chikushi

住宅建設、セメント、ノンバンクなどを担当。「そのハラル大丈夫?」(週刊東洋経済eビジネス新書No.92)を執筆。

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