離婚破綻を防げない「貧相な養育費支給」の実態 児童扶養手当も養育費も簡単にはもらえない

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このように厳しい現実がシングルマザーには待ち受けているのです。子どもの未来のために、幼児期からしっかりした教育が大切だといわれますが、そのためにもお金は必要です。情操教育のうえでも安定した生活は必要でしょう。

母親が貧困の中で苦労していては、これらは手に入れられません。地域や社会も手を差し伸べて、ひとり親家庭が安心して暮らせる環境整備をしていくことが急務ではないでしょうか。

そんな中で、夫婦問題コンサルタントとして非常に興味深い民間のサービスがあります。「養育費保証」というものです。現在日本国内で扱っているのは、家賃債務保証を中心に総合保証サービス事業を手がけるイントラストだけですが、「養育費保証サービス」は社会貢献の一環として始めたそうです。

民間の養育費保証の契約に補助金を出す自治体も

養育費保証サービスは、法的効力の強い公正証書などを作成して養育費の取り決めを交わしている人が対象。月額養育費の12カ月分を上限に、未払いが発生したら毎月の養育費を立て替えてくれるというものです。立て替え金は、保証会社が相手方へ連絡し回収を行います。離婚後「相手と関わりたくない」というシングルマザーにとっても助かるのではないでしょうか。

民間のサービスですから、契約のための保証金が必要になりますが、それがシングルマザーの負担になるかもしれません。最近では、初回保証料に補助金を支出している自治体があります。明石市と大阪市です。明石市は試験運用、大阪市は今年度の取り組みとしてすでにスタートしています。

その背景には、大阪市内のひとり親家庭の養育費の受け取り率が全国平均と比べて低いという実情があります(大阪市の調査では9.8%にとどまっています)。

地味ですが、このようなコツコツとした取り組みは大事だと思います。2つの市の取り組みがきっかけとなり、別の自治体でも養育費保証の支援に力を入れるようになると、多くのひとり親家庭が救われるのではないでしょうか。

寺門 美和子 FP、夫婦問題コンサルタント

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てらかど みわこ / Miwako Terakado

大手流通業界系のファッションビジネス経験後、夫の仕事(整体)を手伝い主にマネジメントを担当するが、離婚。「人生のやり直し」を決意、自らの経験を生かした夫婦問題カウンセラー資格取得を目指す中でFPの仕事と出合い、ダブルで資格を取得。顧客には「からだと心とおカネの幸せは三つ巴」とつねに語る。独立系のFP集団「FP相談ねっと」認定FP。相続診断士・終活カウンセラーとしても活動を始め、人生後半の「お金と暮らしと夫婦問題」のコンサルタントとして活躍中。

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