離婚破綻を防げない「貧相な養育費支給」の実態 児童扶養手当も養育費も簡単にはもらえない

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こうした国や自治体からの支援だけでは、十分な子育てはできないのが現実でしょう。これに加えて、離婚でひとり親となった家庭にとって養育費は必要です。しかし、注意しなければいけないのは、所得限度額に養育費が影響することです。

前年の所得と養育費の8割相当の金額を足すなどした金額が「所得」となるからです。養育費をたくさんもらっている場合、限度額をオーバーして児童扶養手当などが支給されない可能性もあります。

しかし、現実には「養育費をもらえない」というひとり親家庭が少なくありません。専門家の間では、養育費が少なかったり支払われなかったりするため、困っているという離婚女性の話もよく耳にします。

養育費は、離婚した元夫婦の間で金額などを話し合って決めるものですが、2016年度の厚生労働省の調査によると、母子家庭のケースで「養育費の取り決めをしている」ところは42.9%、「実際に受け取っている」ところは24.3%にとどまっています。

離婚したら「お金の縁」など切れても関わりたくない

では、なぜ養育費の取り決めをしない元夫婦が多いのでしょうか。同じ調査の結果によると、「相手と関わりたくない」という理由が31.4%で最も多く、次いで「相手に支払う能力がないと思った」20.8%、「相手に支払う意思がないと思った」17.8%……となっています。

「相手と関わりたくない」が多い背景には、女性が精神的に強くなっていることや、社会全般に「面倒くさい病」が広がっているということもあるかもしれません。しかし、養育費を諦めざるをえない方々は多く、私のご相談者もそれで苦しんでおられます。

元夫が無職で支払い能力がないケースもあれば、それなりに収入がある元夫でも、調停で所得隠しを行った末、養育費の支払いを拒否するというケースもあります。

養育費の金額は元夫婦で話し合って決めますが、目安がないと決められないという場合のために、裁判所が「養育費・婚姻費用の算定表」を作っています。養育費を支払う人ともらう人の所得(収入)や、子どもの人数や年齢などに応じて目安の金額が示されています。

しかし、算定表の金額は、子育てに実際にかかる費用に比べると少ないと思います。都内の私立高校に通う子どもがいる母子家庭など、その算定表ではとうてい足りないのです。養育費に不満があれば改めて調停することもできますが、弁護士の依頼費用や争うエネルギーなどが必要。それが嫌……、面倒くさい……、請求を諦める……というスパイラルで終わってしまうことも少なくありません。

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