アジアで"日系コンタクトレンズ"に商機 飽和状態の国内を脱出せよ!

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東南アジアの「目の健康」は先進国の2歩後ろ

「目の中にレンズを入れるなんて……」メニコンの創業者である田中恭一氏が日本初の角膜コンタクトレンズの実用化を成功させて間もない1950年代半ばから後半当時は、日本人の多くがおそらくそう思っていただろう。コンタクトレンズの普及には啓蒙が必要なのである。

東南アジアでは、シンガポールとそのほかの諸国との間に啓蒙の度合いに雲泥の差がある。シンガポールは日本とあまり変わらない。インターネット環境が十分に高度化し、現地で暮らす一般市民にもほかの先進国の情報が共有されていることがその理由のひとつだろう。

しかしそれ以外の国では、コンタクトレンズ以前に、そもそも正しい視力矯正のやり方というものが知られておらず、自分の目に合った度数の眼鏡を選び取ることすらままならない状況。眼鏡~コンタクトレンズ~レーシックなどの角膜矯正手術、という視力矯正の発展段階を踏んできた先進国の2歩後ろを歩いているような状況だ。

さらに、モラルの問題もある。日本では、自分の目に合った度数の眼鏡を掛けていないと、さらに目が悪くなってしまうといった目の健康を保つための考え方が、60年ものコンタクトレンズの歴史の中で構築されてきた。衣食住が満たされ、生活が豊かになり、テレビを見て本を読むようになって、自分の目が悪くなったということに気がつき、それに対応してきたからだ。しかし東南アジアではこれからだ。

そして、インカム(収入)の問題。買いたくても買えない人もいるということ。こうして考えてみると、コンタクトレンズに対する啓蒙の度合いというものは、その国や地域の経済的な発展段階を表しているように思える。

メニコン直営の「Miru」ブランド店舗

しかし、東南アジアを攻略できる可能性はあるという。メニコンの担当者は、「各地域で生活環境が変わってPCの使用などが増えていけば、眼鏡のニーズが増え、コンタクトレンズのニーズも出てくるのではないか。東南アジアの気候として、雑菌などの繁殖が心配されるので、使い捨てコンタクトレンズは衛生的であることから受け入れられる可能性はある」と語る。

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