日興証券買収かなわず、SBIはどこへ? 北尾吉孝 SBIホールディングスCEOに聞く

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北尾吉孝 SBIホールディングスCEO

日興の上場廃止問題が浮上した当初、買収に意欲を見せていたがもくろみは外れた。ネット証券業界では再編気運が高まるが、この動きをどう見ているのか。北尾氏を直撃した。
(『週刊東洋経済』4月14日号より)

日興証券は終わった話、世界中でガンガン攻める

1:今年1月末の決算説明会では、日興証券の行方次第で買収に名乗りを挙げる意向を表明していました。

われわれが動き出すには前提条件が二つあった。一つは日興証券が上場廃止になること。上場廃止が当然だと思っていたが、実際は非常に不思議な結果(上場維持)になった。もう一つはシティグループがコミットメントしないこと。しかし、二つの条件ともに逆になり、日本勢の出る幕はない。私の頭の中では、もう終わったことです。

2:具体的に日興のホールセール部門が欲しいとも言及していましたが、これで完全にその可能性はなくなりました。

日興証券の話はそのときにパッと出てきた。「策に三策あるべし」で現段階では言えないが、施策を絞って次にどうすると考えている。(発表は)今から数カ月もかからない。

日興がシティの傘下に落ち着いても、彼らは日本の大手証券の経営経験がゼロなんだから、かなり難しい経営を余儀なくされるでしょう。

3:ネット証券業界では三菱UFJグループがカブドットコム証券へTOBをかけ、松井証券へ出資交渉するなど、新たな再編気運が高まっています。この影響をどう見ますか?

影響はもうないね。「ウィナー・テイクス・オール」がネット業界の大原則だ。弱者が引っついたところで勝者にはなれないのです。ネット証券業での競争はとうの昔に終わっている。特に、手数料競争が終わった段階で決着がついた。SBIイー・トレード証券は、顧客数や預かり資産など他社と比べて圧倒的な差をつけている。シェアを見れば勝敗がわかるでしょう。

4:ネット証券やアセットマネジメントなど、今後のグループ展開をどう考えていますか?

ネット証券は、今年度中にも始まるネット銀行と密接につながる。証券業界全体でどのようにシェアを取るかが重要です。やるべきことはまだまだある。アセットマネジメントは徹底してグローバルベースでやる。

ほかにも、貯蓄から投資の流れが増える中で投資信託が非常に重要な金融商品になると考えている。今後はSBIの総力を挙げて、投資信託を拡大させるつもりだ。

5:海外での企業投資もさらに加速させることで、CEOとして掌握する範囲がますます広がります。

私にとって後継者問題は当然あるが、今は56歳でそんなに慌てた話ではない。大企業の社長は60歳代でもやりますから。今は世界中でガンガン攻めまくる時期です。トップは私でいい。ある程度攻めて領土が確定して、統治するような段階になれば、違うタイプのトップでもいいのでしょう。

きたお・よしたか●1951年兵庫県生まれ。1974年慶応大学経済学部卒業、野村証券入社。野村証券事業法人三部長を経て、1995年にソフトバンク常務取締役に就任。2005年に取締役退任。現在はSBIグループ15社のCEOを兼務。

井下 健悟 東洋経済 記者

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いのした けんご / Kengo Inoshita

食品、自動車、通信、電力、金融業界の業界担当、東洋経済オンライン編集部、週刊東洋経済編集部などを経て、2023年4月より東洋経済オンライン編集長。

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