障害者雇用は企業が主体になるべき 日本理化学工業会長・大山泰弘氏④

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縮小
おおやま・やすひろ 1932年東京生まれ。チョーク製造の日本理化学工業会長。中央大学法学部卒。父親の経営していた同社に入社し50年以上実質的な経営に当たる。従業員74人中55人が知的障害者、その一方で、チョークでは業界のトップ企業である。

チョークという一見、単純そうな製品ですが、日本理化学では研究開発に力を入れてきました。少子化によってチョーク市場も縮小が続いています。それだけにこれまでの製品に安住せず、新しいことに積極的に取り組んでいます。

 その一つが、ホタテの貝殻を混ぜた環境に優しいチョークです。ホタテ養殖でゴミとして処分に困っている貝殻を使ったものです。これも単に混ぜればいいわけではない。書き味と見やすさを両立させるために、北海道の工業試験場と一緒に工夫を重ねました。

「キットパス」という新製品は、ホワイトボードだけでなく、ガラスにも書いて消せるマーカーです。これは従来のマーカーのようにインクではなく、口紅と同じパラフィンを原料にしたもので、粉の出ないのが特徴です。これまで手薄だった医療現場や一般企業向けに販路が広がるのではと期待しています。

働ける障害者は企業で働いたほうが、ずっと幸せ

日本では障害者雇用がなかなか進みません。企業や官公庁は法律によって一定割合の障害者を雇わなければなりませんが、多くの企業は未達成で、国に納付金を支払ってお茶を濁しています。障害者を雇うより納付金のほうが安くつくので、安易にそちらを選んでしまっています。

知的障害者が養護学校を出た後、福祉作業所で働いた場合、補助金や職員の人件費などで、生涯2億円の経費がかかるそうです。障害者であっても企業が作業者に配慮をしたり、職業訓練を行ったりすることで、一般の企業でも働けるようになります。私のところでは、知的障害者に最低賃金法に定める賃金を払っていて給与は12万~13万円になります。福祉作業所の平均賃金は1万円程度ですから、大きな違いがあります。

本来、働く場を提供するのは、企業の役割です。経営の素人である福祉関係者が作業所を運営するより、企業経営者が障害者を雇ったほうがさまざまな点で適切なはずです。障害者であっても労働の分野は企業が主体になるべきです。私流に言えば「働くことの幸せ」を、余計な費用をかけて福祉が担当しているほうがおかしいのです。これは行政自らが改革すべきです。

企業からの賃金と障害者年金を足した金額が、最低賃金を超えていればよいと法改正をすれば、企業の負担もずっと軽くなって、障害者雇用はもっと進むはずです。働ける障害者は企業で働いたほうが、彼らもずっと幸せなのです。社会全体の費用からいっても、ぜひとも導入してもらいたいと考えています。

週刊東洋経済編集部
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