知的障害者でも働ける 日本理化学工業会長・大山泰弘氏②

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おおやま・やすひろ 1932年東京生まれ。チョーク製造の日本理化学工業会長。中央大学法学部卒。父親の経営していた同社に入社し50年以上実質的な経営に当たる。知的障害者を積極的に受け入れる一方で、チョークでは業界のトップ企業である。

49年前、知的障害者の受け入れを始めたのはほんの偶然でしたが、健常者・障害者を問わず、働けることは幸せなことであり、その幸せを与える場が企業なのだと考えるようになった私は、障害者雇用にこれまで以上に積極的になりました。1975年には川崎工場が、「心身障害者多数雇用モデル工場」の認定第1号となりました。

 知的障害者が働ける環境にするためには、さまざまな工夫が必要です。たとえば無理な姿勢をとらせないとか、危険な作業をなるべく減らすというのは当然ですが、これは健常者であっても必要なことです。

知的障害者の多くは、はかりの目盛りを読み取れません。しかし、てんびんばかりを使うようにして、必要な分量と同じ重さの重りを用意して、重りと容器に色を塗り、「青の容器の材料は、青い重りで量って混ぜる」といったことを決めておけば、彼らにもできます。この色分けのアイデアは、彼らが信号を守りながら一人で通勤してくることに気づいてひらめきました。信号がわかるということは色を識別できるということですから。

人間を工程に合わせるのではなく工程を人間に合わせる

時計が読めなくても、このスイッチを入れたら砂時計を引っくり返して、砂が落ち終わったらスイッチを切るんだよと教えれば、きちんとできます。

一人ひとりと付き合いながら、何ができて何ができないかを少しずつ理解して、工程を改良する。そうやって知的障害者とともにやってきました。それは振り返ってみれば、人間の能力の発見ともいえる作業でした。

人が生きている以上、能力がゼロということはありません。人間を工程に合わせるのではなく、工程を人間に合わせるという発想が大事です。確かに健常者が1時間に1000個組み立てられるものが、知的障害者は100個しかできないかもしれません。でも作業を切り分け、得意な工程に特化すれば、5人で5000個できるかもしれない。生産工程は、細分化・単純化が進んでいるだけに、改良の余地があります。要は能力を生かす工夫をしているかどうかです。

知的障害者であっても、皆それぞれ頭の中で情報処理をしています。理解できるように指示をするようにしたり、工程を変えたりしてみる。そうすれば彼らも一人前の戦力になります。私の会社でもできているんですから、優秀な日本の経営者が知恵を出し合えば、もっと障害者を雇うことができるはずです。

週刊東洋経済編集部
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