2大会派過半数割れ、親EU派の今後の戦略とは EU主要ポストで「ドリームチーム」誕生も
5月23~26日にEU(欧州連合)各国で行われた欧州議会選挙では、保守系中道右派会派の欧州人民党(EPP)と社会民主主義系中道左派会派の社会民主進歩同盟(S&D)の2大会派が大幅に議席を失い、両会派の合計で議会の過半数を割り込んだ。EUに懐疑的なポピュリスト勢力が議席を増やしたものの、事前に警戒されたほどの大幅増とならず、やや安心感も広がっている。
2大会派が失った議席は、ポピュリスト勢力だけでなく、リベラル系会派の欧州自由民主同盟(ALDE)や環境重視の欧州緑の党・自由連盟(Greens/EFA)など親EU会派にも流れた。ポピュリストの団結は難しく、EUの政策運営への影響力は限定的にとどまりそうだ。ただ、今後の議会運営は2大会派に加えて、他の親EU会派の協力も必要となる。意見調整が今以上に難しくなり、EU改革の推進力が弱まる恐れがある。こうした選挙の結果は、今年後半に相次いで交代するEUの主要機関トップの人事にも影響しそうだ。
注目されるのは主要3ポストの行方
なかでも注目を集めるのが、①EU内の政策を立案・執行する行政府で、約2万5000人のEU官僚を指揮する欧州委員会の委員長、②国際的な場でEUを代表し、時にEU大統領と称される欧州理事会(EU加盟国の首脳で構成され、EUの政治指針を定める最高意思決定機関)の常任議長、③EUの単一通貨ユーロの番人で、域内の金融政策を一元的に担うECB(欧州中央銀行)の総裁、の3ポストの行方だろう。
①は現在、ルクセンブルク首相やユーロ圏財務相会合(ユーログループ)議長を歴任したジャン・クロード・ユンケル氏が務め、10月31日に5年の任期を満了する。
②は従来、EU加盟国の首脳が半年毎の輪番制で務めてきたが、2009年のEU基本条約改正で常任議長として新設され、元ベルギー首相のヘルマン・ファンロンパイ氏が初代議長に就任した。趣味が俳句なことで知られている。2代目議長には元ポーランド首相のドナルド・トゥスク氏が2014年に就任、2年半の任期を2回務め、11月30日に退任する。
常任議長はこれまでドイツやフランスなどの大国からは選ばれていない。今回もリトアニアのダリア・グリバウスカイテ大統領やオランダのマルク・ルッテ首相などが有力視されている。EUは現在、主要機関トップに女性が一人もいない点を問題視しており、この観点からグリバウスカイテ氏が有利とみられている。
③は単一通貨の発足に伴い1998年に創設され、オランダ中銀総裁出身のウィム・ドイセンベルク氏、フランス中銀総裁出身のジャン・クロード・トリシェ氏の後を継ぎ、2011年にイタリア中銀総裁出身のマリオ・ドラギ氏が3代目の総裁に就任し、10月31日に8年間の任期を終える。欧州債務危機を辣腕で乗り切り、「スーパーマリオ」と評されただけに、後任に注目が集まる。
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