2大会派過半数割れ、親EU派の今後の戦略とは EU主要ポストで「ドリームチーム」誕生も
EUの主要ポストの人選は人物本位を建前としながら、実際には特定国の出身者がポストを独占することがないよう、加盟国間のバランスが配慮される。
欧州委員会の委員長は、欧州議会選挙の結果を踏まえ、欧州理事会の特定多数決(加盟国の55%以上、人口構成比の65%以上の賛成多数)で候補者を指名し、欧州議会の過半数の賛成を得て選出される。ユンケル氏が選出された2014年には、欧州議会の最大会派の筆頭候補が委員長候補に指名されたが、今回もこの方式が採用されるかは決まっていない。フランスのエマニュエル・マクロン大統領などが筆頭候補制に強く反対している。
今回の欧州議会選挙では、ポピュリストが議席を増やした結果、EPPとS&Dの2大会派の合計議席が過半数を下回った。ポピュリストの影響力を排除し、安定した議会運営を行うためには、2大会派以外の親EU会派の協力が必要となる。
鍵を握るのがマクロン大統領とみられている。マクロン大統領の中道政党・共和国前進は、前回の欧州議会選挙後に結党されたため、今回初めて欧州議会に議席を持つ。共和国前進は中道勢力の結集を目指しているとされ、リベラル系会派のALDEに合流するか、逆にALDEに所属する政党がマクロン大統領の新会派に参加するとみられている。今後のEU人事でもマクロン氏の意向が反映される可能性がある。
委員長、ECB総裁をドイツとフランスが分け合う
現在、欧州委員会委員長の最有力候補は、ドイツ出身のマンフレート・ウェーバー氏。最大会派EPPの筆頭候補で、ドイツのアンゲラ・メルケル首相やオーストリアのセバスチャン・クルツ首相などが推す。ドイツが下馬評通りに委員長ポストを手に入れるとすれば、フランスは別のポストの獲得を目指すだろう。今年から単一監督メカニズム(SSM)銀行監督委員会委員長をイタリア人に譲ったため、現在、フランスはEUの主要機関トップのポストを1つも保持していない。
委員長ポストを逃した場合のフランスの次の標的はECB総裁ポストだろう。フランス中銀のフランソワ・ビルロワドガロ総裁やフランス出身のブノワ・クーレECB理事は次期総裁の有力候補とみられている。フランスは2代目総裁を出している点を問題視する声もあるが、過去のポスト配分よりも現在のポスト配分のほうが重視されるだろう。現職理事の再任には関連規則の改正が必要なため、クーレ氏よりもビルロワドガロ氏のほうが有力だろう。なお、同氏は陶器の老舗ビレロイ&ボッホの創業家出身であることも有名だ。
マクロン大統領の影響力拡大で、フランス出身の欧州委員会委員長が誕生する可能性も高まっている。なかでも、英国のEU離脱協議でEU側の主席交渉官を務めたミシェル・バルニエ氏が有力だ。前述のウェーバー氏がドイツの地方政党出身で国政経験のない欧州議会議員であるのに対し、バルニエ氏はフランスの外相や同国出身の欧州委員などを歴任し、実績も知名度も人脈も抜群だ。マクロン氏の共和国前進の出身ではなく、ウェーバー氏同様に議会最大会派のEPP出身という点も妥協案としては収まりがよい。
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