「炎上CM」を広告業界がやめられない明快な理由

「怒り」を表明する女性がなぜ増えているのか

私自身も、ある広告が炎上したとき、SNSの投稿を興味深く追いかけていたら、数時間ほどコピーが書けなくなってしまった経験がある。批判の言葉でパンパンになった脳は、アイデアを出せなくなってしまうことを知った。ジェンダー炎上ときちんと向き合わず、「最近みんなうるさいよね」と流してしまうクリエーターが多いのは、ある種の防衛本能かもしれない。

かといって制作者以外の人間がチェックをするのも、簡単ではない。大勢の人間が関わり、アイデアを積み上げ、作り上げたものに対して「これはマズイですよ」と言うのは勇気がいる。マズイと思うあなたの感覚は正しいんですか? と、針のむしろになるかもしれない。

女性でさえ判断が難しい

また最近の炎上広告は、「女性でも判断が難しい」と思うものもある。

資生堂「インテグレート」(2016年)のCMは、女友達に「(25歳になったら)ちやほやされない」「カワイイという武器はもはやこの手にはない!」と言われたり、上司に「(頑張ってるのが)顔に出ているうちはプロじゃない!」とたしなめられる表現が問題視された。「結局女性は外見なのか?」「女は仕事ができても疲れた顔したらダメなんだ」と炎上した。

結果だけを見ると、「確かにこれはまずいね」という感想を抱くが、もし炎上前にこれらを見せられていたとしたら、自分はきちんと指摘できたか。商品が化粧品である以上、見た目の美しさに結論づけなければ広告にはならないし、似たような表現はこれまでいくらでもCM上にあったと思う。東村アキコ氏のマンガ『東京タラレバ娘』では、同じような会話が人気を博していた頃でもあった。

さらに今年2月に炎上したLOFTのバレンタイン広告。「女の子って楽しい!」というコピーとは裏腹に、女性同士の足の引っ張り合いや小競り合いを描いたイラスト動画に「時代遅れでダサいしリアルじゃない」「女貶めたいだけ」という声が上がったのだが、いつからこういう表現に「嫌だと言っていい」ことになったんだろう。

「女の敵は女」「女の友情は希薄」などという固定観念に、みんなウンザリしていたんだなあと思うし、私もそれには同意する。しかし女性ウケしそうなイラストとポップなアートディレクションを見ると、こういう表現をつい最近まで面白がってたんじゃないのか?と、作り手側としては混乱するような気分もある。

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