フランスの子育てが「自己責任」とは遠いワケ 「社会に守られている」となぜ感じるのか

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 保育園時代の長男くん。当時よく通っていた図書館にて(写真提供:髙崎さん)

ちなみにフランスでは、2019年9月入学から3歳以上の保育学校は義務教育となることが決定されているそうです。無料&義務化ってすごい……!

ただ、マンガにも描いたように、フランスの育児環境だって完璧ではありません。ほかのフランス在住ママの話によれば、保育園がストライキで急に休みになったり、親にとって不便なところもあるようです。

一方、日本にはフランスよりも優れている育児支援だってあります。熱心で、ケアが丁寧で、親の心に寄り添ってくれる保育士さんだってたくさんいます。

じゃあどうして私は日本で暮らしていたとき「国や社会に守られながら子育てしている」と感じたことが一度もなかったんだろう? そこに、私はかなり引っかかってしまいました。

公共の場で子連れの肩身が狭いから? 長時間労働問題が解決されないから? 男性は育児参加しにくく、負担が女性に偏りがちだから? 保育士さんたちの労働条件がいつまでも改善されないから……?

思いつくいろんな理由をつきつめていくと、やはりどうしても、日本では「育児は大変なもの。だから育児をする人たちを助けよう」という意識が浸透してないということがいちばん大きい気がしてしまうのです。国が女性に「産め、育てろ、働け、輝け」というメッセージを強く発信するわりには、その大変さを理解して寄り添うようなメッセージや、そのためには周りの協力が不可欠だというメッセージはなかなか発信してくれない。

育児の大変さは、実際に体験してみないとわかりにくいものです(私も産む前は全然わかってなかった!)。でも子持ち家庭だけがいくらその大変さを発信しても、その発信は一部の層にしか広がらない。

だからこそ、国からのメッセージとして発信するのがいちばんいい。国が発信してこそ、子育て経験のない層にもちゃんと届く。じゃあ、なぜ日本ではそういう国からの発信が少ないの?

子育てに理解のある政治家が少ない日本

フランスでは、大統領の方針のもと、政府閣僚の男女比は半々だそうです。国民議会選挙の候補を立てるときも男女半々。一方、日本の女性国会議員比率は、先進国では最下位です。政治家の年齢層もかなり高い。つまりは、リアルな子育てを知っている人が、国の方針を決める場にほとんどいないということ。そうか、それじゃ「育児は大変なもの。だから育児をする人たちを助けよう」なんてメッセージが発信されるわけはないし、そういう意識が浸透しないわけだ……。ガックリ……。

と、ここまで原稿を書いたところで、「男性育休義務化に向けて、議連発足へ」というニュースが飛び込んできました。しかも自民党の有志議員によって! ついに日本も、国がちゃんとメッセージを形にして発信してくれるように動き出す……? この議員の方たちを心から応援しつつ、どうなるかを見守りたいと思います。

というわけで、今回学んだ「家族がつかれないためのヒント」は……。

育児に対する、国や社会の無理解に疲れた。

せめて、選挙に行こう。育児に理解ある人に投票しよう。

さて、次回はフランス・パリ編の最終回。一見、とても気の合ったこのご夫婦にも育児のことでいろいろ揉めた時代があったそう。それをどう乗り越えたのかを紹介します。

この連載にはサブ・コミュニティ「バル・ハラユキ」があります。ハラユキさんと夫婦の問題について語り合ってみませんか? 詳細はこちらから。
ハラユキ イラストレーター、コミックエッセイスト

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はらゆき / Harayuki

雑誌、書籍、広告、Webなどの媒体で執筆しつつ、コミックエッセイの著書も出版。2017年から約2年間バルセロナに住んだことをきっかけに、海外取材もスタートさせる。著書に『女子が踊れば!』 (幻冬舎)、『王子と赤ちゃん』(講談社)、『オラ!スペイン旅ごはん』(イースト・プレス)、この連載を書籍化した『ほしいのはつかれない家族』(講談社)など。この連載のオンライン・コミュニティ「バル・ハラユキ」も主宰し「つかれない家族をつくる方法」を日々探求、発信中。ハラユキさんのHPはこちら

 

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