金融市場の大崩壊が近い将来に起こりうる理由 債券市場の暴落ドミノはありうる話だ

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それが、米中貿易交渉の本質といっていいのかもしれない。アメリカと中国の間で、新たな時代の覇権争いが行われているということだ。

いま世界は「景気後退」に直面している!?

懸念材料はまだある。

IMF(国際通貨基金)が4月9日に発表したデータによると、いま世界は70%の国や地域で景気が減速しているそうだ。IMFの世界経済見通し(ワールド・エコノミー・アウトルック)は、2019年の成長率予測を1月時点の3.5%から3.3%に下方修正。日本やアメリカ、欧州など主要国の成長率もそろって下方修正された。

3.3%の成長率は、リーマンショック以後始まった景気回復の中で最も低い水準となる。下方修正は3期連続で、中国の経済成長率予測は天安門事件以来最も低い6.3%となった。ブレグジットを控えているイギリスも、合意なき離脱となれば大幅な景気後退局面になると予測されている。

米中貿易戦争の影響を受けて日本経済にも異変が見え始めてきている。

内閣府発表の「景気動向指数」で、3月の「基調判断」が景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に下方修正された。景気動向指数の基調判断が悪化となったのは、2013年1月以来6年2カ月ぶりになる。今後の1~3月期のGDP速報値や日銀短観などを見ないと何とも言えないが、日本経済も景気が後退局面に入っていることは間違いない。

さらに心配なのがアメリカと中国の景気悪化懸念だ。

例えばアメリカは、政府債務いわゆる財政赤字の問題がより深刻になりつつある。2022年度以降、財政赤字は年間1兆ドルを超えるとみられており、議会予算局(CBO)は 今後2032年度までに政府債務がGDPの93%に達すると予想している。

リーマンショックによる金融危機後、それまでは政府債務の対GDP比はわずか34%だったが、2018年には78%にまで拡大。通常、政府債務が増えていくに従って金利は徐々に上昇していくものだが、現在では逆に低下傾向にある。リーマンショックによるリセッション前の長期金利は4%以上の水準だったのだが、現在では2.7%程度にまで下落している。

通常、政府債務は対GDP比が90%を超えると増加率が鈍化していくといわれるが、日本もそうであるようにアメリカもまた90%を超えても増加ペースが落ちないかもしれない。将来のことはわからないが、以前のようにアメリカ政府が政府債務の増加に神経を尖らせている姿勢は見えない。とりわけトランプ政権が続く限り、アメリカの債務は膨れ上がっていく可能性が非常に高い。

一方の中国は、「一帯一路」政策もあって世界中の発展途上国に資金を融資してきた。そしていま、これらの融資額はアフリカと中南米だけで30兆円を超える水準に達しているといわれている。

さらに、米中貿易交渉でも議題になっているが、「公的資金の融資制度」の問題がある。中国企業の多くは国営企業だったわけだが、表向きは民間企業となり政府がバックアップしている状況にある。これが中国の急速な経済発展の原動力ともいわれ、地方自治体のプロジェクトなどにも積極的に公的融資が使われており、これら莫大な中国マネーが世界中にばらまかれ、そして今その処理に苦慮しつつある状況といっていい。

スリランカのように、中国からの借金を返済できずに港の権利を99年間担保として差し出すといった状況が、これからもっと増えるかもしれない。債権放棄のような形で中国の負担になってくる可能性もある。

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