半減案も浮上、「専業主婦の年金問題」の核心 適用拡大と公的年金等控除縮小で解決に

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縮小

結局、政府の今の方針は、厚生年金の適用拡大を通じて第3号被保険者問題を解消することにしている。決して、専業主婦の年金給付を半減するという話ではない。

無業の専業主婦といっても収入が皆無という人は少ない。かつては年収130万円未満なら第3号被保険者になったが、今は適用拡大が行われ、大企業に勤める人は年収106万円未満でないと第3号被保険者にならない。

現在はそれを中小企業にも拡大しようとしていて、106万円以上収入を得ていれば、第2号被保険者になって少しでも年金保険料を払ってもらい、基礎年金だけでなく所得比例年金も受け取れるように誘導している。基礎年金しか受け取れない第3号被保険者と比べると、年金給付額は増えることになる。

つまり、第3号被保険者だった人でも、少しでも所得を得ていれば第2号被保険者になって年金保険料を払ってもらい、その代わり年金給付も多くもらえるようにする。これが、問題の解決策として目下取り組んでいることである。

夫が高所得の主婦をどうするか

とはいえ、夫が高所得を得ている無業の専業主婦もいて、わざわざ所得を少しでも稼ごうという動機がない人もいるかもしれない。そうした専業主婦は、名実ともに「無業」の専業主婦として、引き続き第3号被保険者として残り続けるかもしれない。その場合、厚生年金の適用拡大というやり方では問題を解決できない。

しかし別の手がある。それは、高所得高齢者に対する公的年金等控除の縮小である。所得税制において、年金受給額はそっくりそのまま税金がかかるわけではない。年金受給額から概算で設けられた公的年金等控除が差し引かれたのちに、所得税と住民税が課される。公的年金等控除が多いほど、課税対象となる所得は少なくなり、所得税・住民税の負担は軽くなる。

公的年金等控除は、年間1000万円までは年金給付額が増えるほど控除額が多くなる仕組み(2020年以降)だ。今なお手厚く設けられており、その分、所得税負担が軽くなっている。そこで、高所得高齢者に限定して、給付が増えても公的年金等控除が増えない形で控除を縮小するとどうだろう。

現役時代に高所得を得ている夫は、所得比例で払う厚生年金保険料を多く払っている分、厚生年金の給付も多く受け取れる。加えて、その妻が第3号被保険者なら、保険料を払わずに基礎年金が受けられる。そこで、厚生年金を多くもらう夫により多く所得税を払ってもらうことで、妻が保険料を払わなかった分の負担を、形を変えて負ってもらうことができる。

第3号被保険者問題は、こうした合わせ技で働く女性と専業主婦との間の無用な対立を避けつつ、解消する方向に導くことができるだろう。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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